強豪相手にゴールを奪えるか。それが代表エースFWへの第一歩
とはいえ、古橋が熾烈なFW競争の中で生き残れる確証はまだない。というのも、2019年11月の初キャップ以降、ゴールを挙げたのは、2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア2次予選のモンゴル戦とタジキスタン戦だけ。同格以上の相手からは結果を残せていないのが実情なのだ。
直近の2022年は4試合に出場。ブラジル、エクアドルという強豪国とのゲームで先発しているが、ブラジル戦ではシュート1本のみに終わっている。そして最後のサバイバルだったエクアドル戦も、南野拓実(モナコ)のハイプレスから相手DFがミスパスをして迎えた前半40分の決定機を逃しており、ここ一番での勝負弱さを露呈する形となっている。
ライバルである浅野はご存じの通り、カタールW杯のドイツ戦で決勝弾を奪っているし、前田にしてもクロアチア戦で先制弾を叩き出している。そういった面々よりも古橋の方が勝負強い点取屋であることを示さなければ、エースFWになることはできないのだ。
「ゴールを意識しながら自分らしいプレーを出すというのはもともとやっていましたけど、それを一回り二回り引き上げ、シュートレンジを広げるチャレンジをしてきたので、それが今季のゴール数につながっているのかなと思います」と充実の1年を経て、今の古橋は決定力に自信を深めている。それを6月のエルサルバドル(豊田)・ペルー(吹田)2連戦で実証できれば、今後への道が開けてくるはず。彼にとって今回の6月シリーズは今後のサッカー人生を賭けた戦いになるといっても過言ではない。
古橋自身は9カ月ぶりの代表合流に向け、現在の主軸アタッカーである三笘、伊東純也(スタッド・ランス)、鎌田大地(フランクフルト)、久保建英(レアル・ソシエダ)らと共闘するイメージを膨らませていたという。特にイングランドで異彩を放った三笘との共演は魅力的だ。彼がドリブルでえぐって中に折り返したボールに古橋が飛び込むといった理想的な得点パターンが具現化されれば、本人にとっても、森保監督にとっても朗報だ。まずはゴールという結果で強烈アピールを見せ、カタールW杯落選のリベンジを果たしてほしい。
ここから雑草系FW・古橋の逆襲が始まるのか否か。まずは15日のエルサルバドル戦からしっかりと見極めたいものである。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。