インドネシアの鉄道では今も「着用義務」が
これはインドネシアでも同様……というより、インドネシアではより厳格な「マスク着用体制」が今も続いている。
鉄道の車両内や駅構内ではマスク着用は義務で、それを持っていなければ駅の中にある売店でマスクを買うよう駅員に要求される。そして駅の外にあるコンビニの店員も、そこが駅構内でないにもかかわらずマスクをしている。
このあたりは日本とほぼ同様の事情で、いわゆる「エッセンシャルワーカー」は今でもマスクが欠かせない。
また、インドネシア人の公衆衛生に対する概念が明らかに根付いている。筆者はパンデミック前から気になっていたのだが、インドネシア人は食事の前に手洗いをする習慣がなかった。
レストランに行ってもフィンガーボウルは出てくるが、おしぼりはまず出てこない。だからといって、手洗い用の水道設備が充実しているというわけでもない。屋台なら尚更だ。
COVID-19が猛威を振るっていた時期、中央政府は国民に対して手洗いを推奨していた。これは裏返せば、日本人のように帰宅したらまず手洗いをするという習慣がなかったという意味だ。
が、今では街のあちこちに手洗い用の蛇口が設置されるようになり、「食事前の手洗い」もごく普通の行いになった。
それと同時に、「咳をしていたらマスクを着ける」という習慣(というよりマナー)もしっかり根付いている。
「自覚的な市民」はどの国にも
インドネシアに限らず、どの国にも自覚的な市民は必ず存在する。
「パンデミックはもう終わった。だからマスクを着ける必要はなくなった」と考える人がいる一方、「誰かに病気を移したくない」という意図で今もマスクを着用し続ける人がいるのは、極めて自然な光景ではないか。
そのような背景を鑑みれば、我々日本人が海外旅行をする際はマスクを2〜3枚持っていったほうがいいのでは……と筆者は考える。
さすがに、毎日のようにマスクをする必要は全くないとは思う。しかし、海外旅行とは「イレギュラーとの遭遇」でもある。旅行中に風邪を引いた場合、そして上記のように公共交通機関でマスク着用を求められた際は、やはり事前の準備が物を言う。
ウェットティッシュも持っていこう!
それに加え、筆者は日本からウェットティッシュを持参することもお勧めする。
上記のように、海外のレストランではおしぼりが出てこない(そもそも、格安のレストランでもおしぼりが出てくるのは日本くらい)。
そこで「最低限の手洗い」を実行するための便利グッズとして、ウェットティッシュという選択肢が出てくる。
人によっては、日本と海外の衛生状態の落差に愕然とすることもある。この点では日本はやはり突出していて、故に初めて海外旅行をするという人は現地の不衛生さばかりが目についてしまったりも。1862年に上海を訪れた高杉晋作と同様の心境だ。
そうしたことを回避するためにも、ウェットティッシュは旅に必須のアイテムである。
取材・文/澤田真一