番号を手入力する店員
レジ係の店員は、筆者のクレカ(PayPayカード)の表裏を几帳面に確認する。そして番号が書かれていないことを指摘し、やむなく筆者はPayPayカードのサイトをスマホで開いて番号を見せた。
それを店員は、何とタブレットで手入力し始めたのだ。
このあたりは結局、カードの不正利用対策だろう。が、店員が番号を手入力している分だけレジの流れも停滞してしまっている。
さらに書けば、外国人がクレカを差し出した際に「このカードと提携しているインドネシア国内の銀行はどこですか?」と聞かれる。インドネシアでは各銀行がそれぞれ決済端末を用意していて、たったひとつのレジに複数台の端末が並んでいるほどだ。
日本のクレカがインドネシアのどこの銀行と提携しているのか……という点は、あまり悩む必要はないだろう。なぜなら、現地の大手銀行であれば日本の金融機関や国際クレカブランドと広く提携しているからだ。
しかし、そうはいってもこの国の決済端末の乱立具合には唖然としてしまう。また、インドネシアでは「クレカ所有者にとっての利便性」というものはあまり重要視されない。
クレカとは、ある程度経済的に豊かな人々のツールだからだ。
「インドネシアでは日本以上にキャッシュレス決済が普及・浸透している」というのは事実である。が、その方向性は「銀行口座やクレカを持っていない人でも現金を使わずに済む」というところに重点が振り分けられている。
中央政府が重視するのはワーキングクラスやロウアーミドルクラスの人々の経済的底上げで、それは即ち市民間・地域間の経済格差の縮小である。
言い換えれば、クレカを所有する外国人の利便性は二の次なのだ。
未だ「市民権」のない署名欄レスクレカ
そんなインドネシアでナンバーレスクレカが使えるか使えないかと問われれば、答えは「使える」。
しかし、上記の出来事は頻繁にあるため、番号の書かれた従来型のクレカもしくはデビットカードも持参したほうがいいだろう。
最近では署名欄すら省いたクレカも登場している。クレカの署名欄というもの自体が、ある種儀礼的な存在になっている……というのは確かにその通りなのだが、インドネシアでは儀礼的どころか「本人確認の重大なヒント」である。
残念ながら、今の時点で「署名レスクレカ」はインドネシアではあまり使えないだろう。
署名欄すらなくなったクレカの「のっぺらぼう化」がもたらすのは安全か?それとも不便か?
クレジットカードが「のっぺらぼう」になっている。 つまり、それまでカードの表面と裏面に書かれていたはずの番号がなくなっているということだ。 あるのは裏面の自筆サ...
これは即ち、海外旅行においてはたった1枚のクレカでは心許ない……ということでもある。
補助用のデビットカードを持っていこう!
クレカとは審査が絡むものだから、筆者としては「クレカを複数枚持つ」ということは勧められない。
しかし、デビットカードなら話は別だ。これは銀行口座からその都度引き落とすもので、ローンを組むわけではない。買い物をし過ぎて負債を抱えてしまう、ということも絶対にない。
そしてナンバーレスクレカの補助的役割を見事に果たしてくれるのが、番号記載デビットカードということをここで強調しておきたい。
いずれにせよ、久々の海外旅行に臨むなら決済手段は複数用意しておいたほうがいいだろう。
取材・文/澤田真一