日本には交通系ICカードというものがあり、これは「日本的ガラパゴス技術の代表例」と言われたこともある。
交通系ICカードに採用されているNFCの企画はFeliCaで、日本と香港以外の国・地域では殆ど普及していない。
ではなぜ日本でFeliCaが大輪の花を咲かせているかというと、結局は通信速度が大きいからだ。これがあるからこそ、ラッシュアワーのJR新宿駅の自動改札機は今日も渋滞を起こさずに稼働している。
が、NFCの規格がどうあろうと「公共交通機関でもショップでも利用できる非接触型決済カード」は世界各国に存在し、人々の生活を支えている。今回はインドネシアの『e-Money』というICカードを紹介したいと思う。
外国の非接触型カードを使うことにより、日本の交通系ICカードの能力や問題点が自ずと見えてくる。
インドネシアの「e-Money」とは
市民、旅行者問わずインドネシアでの生活の必需品になっているe-Money。
これはマンディリ銀行が発行するカードで、ローカル系コンビニエンスストアのインドマレットで誰でも購入することができる。
使い方は極めてシンプルで、鉄道駅やインドマレットなどで残高をチャージし、あとは日本の交通系ICカードとまったく同じ感覚で使う。
しかしこのe-Money、今やこれなしでは生活自体が不便になってしまうほどの文明の利器なのだ。
インドネシアでは「小銭不足」が慢性的な社会問題になっている。たとえば、コンビニで2万3,500ルピアの買い物をしてレジで10万ルピア紙幣を出すと、かなりの確率で「もっと細かいお金はありますか?」と言われる。
これが個人経営の店や屋台なら尚更で、高額紙幣での支払いを断られてしまうこともよくある。
インドネシアのキャッシュレス決済の浸透は、パンデミック前から既に始まっていた。それは上のような事情が多分にあるからだ。
少なくともこの国では「キャッシュレスは心がこもっていない。現金は人情が伝わる」などと言い出す者は滅多に見かけない。
インドネシア国民は「現金故の煩わしさ」を骨の髄まで味わっている人々だということをここに記述しておくべきだろう。