誰しも一度は「仕事を辞めたい」という気持ちを抱えて働いていたことがあるはず。そんな辞めたい気持ちを周囲に伝えたときに、タイミングや状況などから“甘え”だと受け取られてしまった方もいるのでは。
しかし、本当に仕事を辞めたい気持ちは“甘え”なのでしょうか。
ここでは、甘えだと捉えられてしまう理由、そして悩んでいるときに辞めるかどうかの判断基準をお伝えします。
仕事を辞めたいと思うことが“甘え”と捉えられてしまう理由
まず始めに、仕事を辞めたいと思う理由は人それぞれであり、他人に判断されるものでありません。周囲は安易にタイミングや状況のみで判断しているだけに過ぎません。
なぜそんな状況やタイミングから甘えと捉えられているのか、それには主な2つの理由があります。
1.仕事を辞めること=無責任だという古い考えがある
ほんの少し前まで、「一度就職したら3年は勤めるべき」という風潮があったほど、日本は仕事を辞めることに対して寛容ではありませんでした。仕事を辞めることは、残された社員に迷惑をかける行為である、という考えが植え付けられていたのです。
そんな考えの根本には、「雇ってもらえているから」と企業が従業員よりも偉い立場であるという間違った価値観があります。企業(雇い主)と従業員はあくまで雇用契約により定められた仕事を行う関係です。仕事を行うことによって給与という待遇を受け取っているのです。
正当な期間を経て辞めているのにも関わらず、企業側の人が「甘え」だという考えを押しつけてきたとしても、気にする必要はありません。辞められては困る原因は、企業側が背負うべきことなのです。
2.辞めたい理由がハッキリしていない
「なんとなく仕事に行きたくない」というように、本人にもハッキリとした辞めたい理由がない場合には、周囲から甘えだと受け取られてしまう可能性があります。
しかし、「なんとなく」といった理由だとしても、単なる怠慢ではなく、ストレスからくる心身の不調かもしれません。
辞めたい理由が自分の中でも明確ではない場合、よほど親身に相談に乗っている相手ではない限り、他人にはわかるはずもありません。
ここで大切なのは、周囲に100%理解してもらおうと思わないこと。自分の中でどうしても仕事を辞めたい理由がわかっていればいいということを覚えておいてください。
悩んでいるときに辞めるべきかわかる3つのサイン
今、辞めるべきなのかどうか……、悩んでいる方も多いでしょう。そんなときの判断基準になる3つのサインをお伝えします。
1.心身に不調が表れている
「なんとなく」が心身の不調かもしれないと理由で触れましたが、心身の不調は本人でもすぐに明確に気づきにくいものとなります。普段通り過ごしているのに、いつもの食事量が食べられなかった、いつもより早く目が覚めてしまったなど、本人にも自覚しずらいレベルで少しずつ、いつもの日常を変えていきます。
そんなときは「なんとなく」という感覚と向き合い、いつもと違うことがあったか考える時間を持ってください。そして、睡眠不足などの原因がわかったときには、なぜ眠れないのかを考えてみましょう。その原因が仕事であれば、仕事のストレスによって心身の不調が表れているということ。辞めるという選択をしたほうがいいでしょう。
2.正当な評価を受けていない
どんなに頑張って成果をあげたとしても、正当な評価がされないと感じるのであれば、その仕事から離れるサインです。
しかし、ここで注意してほしいのは、主観でだけ物事を判断していないかということ。自分の目線だけで不当な評価だと感じていても周囲から見ればそうではない可能性もあります。自分がどのように企業の役に立っているのかを具体的に考えたうえで行動に移すようにしてください。
一方的な判断になってしまっているかもと不安に感じたなら、まずは職場の上司や親しい同僚や先輩に相談してみるのも1つの方法です。
3.職場を離れたら悩みは解消される
仕事を辞めたい理由が漠然とした不安だという場合、まずはその不安の正体を知る必要があります。何に対して不安を感じているのか、紙に書き出してみましょう。紙に書くという行動は自分のことを客観視するために有効です。
そして、次にその不安が会社に関係すること(不当な評価によるストレス、上司からのパワハラなど)であれば、職場から離れることを選択肢に入れてください。
最後に。他人と自分の価値観は違う
人はそれぞれの判断基準を持ちます。その判断基準はそれぞれの価値観からきています。似たような価値観を持つ人はいますが、まったく同じ価値観を持つ人などは、まず存在しません。
つまり、他人が自分の価値観であなたのことを“甘え”だと認識しているに過ぎないのです。あなた自身に仕事を辞めたい理由があり、それを“甘え”だと感じなければ、その辞めたいという気持ちに従うことは決して悪いことではありません。
「仕事に行くのが辛い」「これ以上頑張れない」という思いから仕事を辞めることを決断できるのは、あなた自身だけです。他人に左右されるものではないということを忘れないでください。
文・構成/藤野綾子