転職の選考において、面接は候補者と企業がお互いをよく理解するために行うもの。自分の考えを偽りなく正直に伝えることが大切ですが、そのまま口に出すと意図しない方向に進んでしまう場合もあります。
この記事では、面接でよく聞かれる質問のひとつである「苦手な人はいますか?」に対する答え方を解説。転職を成功に導くヒントをお伝えします。
面接官が「苦手な人はいますか?」と質問する理由
そもそもどうして面接で「苦手な人はいますか?」なんて聞かれるのでしょう。まずは面接官の意図を理解しておくことが大切です。
中途採用の場合、多くの企業は即戦力を求めているため、スキルや専門知識、実務経験を重視します。
しかし、どんなにスキルが高くても、他人と関係をうまく構築できないようであれば、力を発揮することは難しいもの。
組織は様々な人の集まりです。自分と合う人もいれば、そうではない人もいるでしょう。社内だけでなく、取引先やお客様にもいろいろな人がいます。そのような人たちとの関係の中で成果を出すことが求められるのです。
「苦手な人がいる」こと自体はネガティブなことではありません。人には合う合わないがあるからです。面接官は質問を通して「この候補者は、苦手な人とどう関わっているのか」を見ています。
例えば、入社後に上司となる予定の人が精神論で仕事を進める人の場合。人の価値観は良い悪いと判断するのではありませんし、他人がそれを変えることは、なかなかできるものではありません。そのため、部下は違う価値観を持っていたとしても、上司の価値観を尊重しつつ、自分の考えも伝えながらうまく仕事をしていくことが求められます。
そのような中、面接で「精神論で仕事を進める人は苦手です。できるだけ関わりたくありません」とだけ言う候補者は、採用しても自社で活躍することは難しいと判断されるでしょう。
「苦手な人はいますか?」と質問された場合の答え方は?
面接官は候補者の「苦手な人との関わり方」を見ていることがわかりました。よって「自分が苦手なタイプ」+「その人との関わり方(どうやって関係を築いているか)」を伝える必要があります。
いくつか例を紹介します。
・自己顕示欲が強い人が苦手な場合
「自己顕示欲が強いと感じる人が苦手ですが、そのような人が自分の想いをアピールすることで、結果的に多くの人を巻き込み、目標を達成してきたことを見てきました。そのような面は私も見習わなければと思います。そのような人と仕事をする際は、自分も同じように顕示欲を出しすぎてぶつからないように意識しています」
・時間にルーズな人が苦手な場合
「時間にルーズな人が苦手です。そのような人には締め切りを早めに設定するなど、業務をスムーズに進められるような工夫をしています」
・何を考えているかわからない人が苦手な場合
「自分の考えをあまり表に出さない人が苦手です。ただ、そのような人は思慮深く、口に出すことに責任を持っている人です。そのような人と一緒に仕事をすることで、私自身多くのことを学べると思います」
ここで挙げたのは、あくまでも例ですので、自分の経験を踏まえて自分の言葉で伝えるようにしましょう。
大切なのは、様々な性格や価値観があることを否定しないこと、受け止めるために努力していることを伝えることです。
面接で「苦手な人はいますか?」と質問された場合のNG回答例
面接での回答に決まった答えはないものの、伝えてはNGなこともあります。3つの例をピックアップしました。
苦手な理由に外見を挙げる
人の外見を苦手な理由として挙げるのは控えましょう。
例えば身だしなみに気を遣えない人が苦手なら、「マナーがなっていないなど、相手のことを考えられない人が苦手です。相手との関係性にもよりますが、アドバイスしたり、自分が手本となるようなふるまいをしたりするようにしています」などと答えるのもよいでしょう。
苦手な人の悪口を言う
苦手な人の非難に終始するような回答も控えましょう。感情をコントロールできない、発言してよい場とそうでない場合の判断ができないとみなされます。面接官が一番知りたいのは、「苦手な人との関わり方」です。
「苦手な人はいません」
前述の通り「苦手な人がいる」こと自体はネガティブではありません。正直に答えるようにしましょう。
どんなに皆とうまく付き合っているように見える人でも、合わない人はいるもの。「苦手な人はいません」と回答されたら、面接官は「本当…?」と疑ってしまうかもしれません。
もしくは「自分と合う人たちだけに囲まれてきたなら、ストレス耐性が低そうだ」と思うこともあるでしょう。
本当に「苦手な人はいない」と感じている人は、自分の中で他人の良い面を意識してみるなどの習慣があるかもしれません。そのことを加えて伝えることで説得力を持たせることができます。
〇〇〇
今回は「苦手な人はいますか?」の回答の仕方をお伝えしました。この質問に限らず、面接官から発せられるすべての質問には意図があります。「どうしてこんなことを聞くのだろう」と考えれば、自ずとポイントがわかってくるはず。様々な質問でシミュレーションしてみてくださいね。
文/やまさん
保有資格:キャリアコンサルタント(国家資格)/キャリア・デベロップメント・アドバイザー(日本キャリア開発協会)