人口急減によるマーケット縮小、情報の洪水で広告が効きにくい今の時代において、事業の成長には“ファン”の存在が欠かせない。企業が商品やコンテンツに関する独自のサイトを設けてファンの声を集め、それを商品やサービスに活かすといった取り組みの一環として、ユーザーと企業・団体、あるいはユーザー同士による双方向的な交流を促す「ファンコミュニティ」と呼ばれるサービスが注目を集めている。
マーケティング業界においてファンコミュニティの先駆者とも言えるのが、クオン株式会社だ。同社は2000年4月にファンコミュニティクラウド「Beach®️(ビーチ)」をリリースして以降、バージョンアップを繰り返しながら累計250以上の企業・団体のコミュニティを構築・運営、ファンコミュニティクラウドでは、270万人以上のユーザーが活動している。
単独サイトではなくプラットフォームであることのメリット
ユーザーがコミュニティを回遊すればファン化もはかどる!
クオン株式会社が運用するファンコミュニティプラットフォーム「“絆”のコミュニティ」。複数の企業や自治体のコミュニティに参加し、掲示板にコメントや画像を投稿したり、返信や「拍手」などのリアクションをとることで交流を楽しめる。
企業とファンの交流サイトというとクローズドなネット空間を想像しがちだが、クオンが提供する「“絆”のコミュニティ」は、複数のコミュニティをユーザーが回遊できるようになっているのが大きな特徴で、現在は50社を超える企業・自治体のファンコミュニティがプラットフォーム上で運用されている。この形態を採用することのメリットについて、クオン株式会社のカスタマーサクセス一部 営業二課 課長 小林梨沙氏はこう解説する。
「プラットフォーム内にコミュニティをオープンすることで、すでにコミュニティでの交流に慣れたユーザーがオープン直後から入ってきてくれるため、交流に慣れていないライトなユーザーを牽引するかたちでスピーディーにコミュニティを育成することができます。つながりを求めて参加するユーザーが初期から活動してくれることで、企業・ブランドとユーザーの距離がスムーズに縮まり、『企業・ブランドへ関心を持ってもらう』というコミュニティの基盤を醸成することが可能となるのです」(クオン株式会社 小林氏、以下同)
ほかにも、プラットフォーム型のファンコミュニティにはメリットがいくつかあるという。
「プラットフォーム内で複数のコミュニティを回遊できるようにすると、より継続的にコミュニティにアクセスするようになったり、閲覧や投稿などのアクションが活発になることがユーザーの活動データから確認できています。回遊すればするほどコミュニティ全体の活性が引き上がってファン化も深まり、ユーザーにとっては、これまで知る機会のなかった企業やブランドと出会うきっかけにもなります」
参加企業・団体のコラボレーション企画でアイデアを投稿したり、自分の投稿がラジオドラマや映画のもとになるUGC(User Generated Contents)の取り組みなども、プラットフォームならではの醍醐味だ。
ファンコミュニティクラウド内には、食品、化粧品、医薬品、不動産、新聞社、家電、インフラ、百貨店、自治体、官公庁、教育機関、スポーツチームなど、さまざまな企業・団体のファンコミュニティが存在する。クオンが支援しているファンコミュニティは、生活者との関係構築や共創、ファン化促進をはじめ、消費行動・ブランド嗜好の実態把握やインナーブランディングも含めたマーケティングなど、多様な用途に活用されている。
それらを達成するためにはユーザーインサイト(ユーザー行動の背景にある心理や潜在意識に対する理解)を得ることが必要で、コミュニティでユーザーインサイトを得るためには、「この場所は安心して自分のことを話せる」とユーザーが感じられ、本音があふれる場を設計することが本質的に求められるという。
「コミュニティの掲示板ではユーザーの多様なコメントが飛び交いますが、そこで行われているのは情報の交換ではなく、価値観の共有・共感です。商品レビューや口コミであっても、商品そのものの機能性の話よりも、その商品を使うことでどういった物語がユーザーに生まれたのか、そこに生まれる価値観でつながれるのがファンコミュニティです」