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働き手不足 、過疎化、高齢化、様々な課題を解決する自動運転ロボットの可能性

2023.05.31

世の中に刺さる、イノベーションの矢を放つ会社のお話だ。ロボット、自動運転、自動運搬、自動配達――ますます、人手不足が深刻化する日本社会に重要なアイテムに取り組み、製品を世の中に送り出している会社である。

株式会社ZMP、谷口恒代表取締役社長(58)。設立は2001年。運搬を担う物流支援ロボ「CarriRo(キャリロ)」、無人宅配ロボ「DeliRo(デリロ)」、歩行速モビリティ「RakuRo(ラクロ)」、無人警備・消毒ロボットPATORO(パトロ)」等、無人の搬送ロボットの製品ラインナップは20種類を超える。

二足歩行ロボット、音楽ロボットを製造・販売し、リーマンショックの経営危機を自動運転の実験車の開発で乗り越えたが、そもそも自動運転の自動車の開発会社ではない。メインの事業は自動運転のロボットの開発、販売、IT、AIによるロボットシステムの構築だ。

2010年代、“楽しく便利な社会を作る”そんな会社の理念を満たす製品の開発は、道半ばであった。さて、どうするか――。

前編はこちら

完全自動運転の車はハードルが高い

リーマンショックで倒産の危機にあったとき、自動運転の実験車の開発・製造でV字回復を果たせた。だが、リーマンショックの時には音楽ロボしか製品がなく、一本足打法が倒産の危機を招いた。その轍を踏むわけにはいかない。自動車の自動運転の開発に集中していたが、それだけに限る必要はない。

谷口は語る。「車だけで勝負しても将来的にどうなるのかわかりません。無人で時速100kmで走行できるレベル4の自動運転車には、100~300m先まではっきりと認知できる高性能なカメラとセンサーが欠かせない。障害物を認知しスピードを落としたり止まったり、障害物を避けたり。それらを判断して信号を送る能力の高いセンサーも必要です。車はスピードが出るので危ない。ミスは許されません」

果たして無人運転の車が高速道路を自由に走り回る時代は到来するのか。それには相当な技術力のアップが不可欠だ。時間もかかるに違いない。

そんな暗中模索の中のある日、街で宅配便の運転手が台車を使って、荷物を運ぶ何気ない光景を目にした谷口の脳裏に、閃きが降ってきた。

屋内自動運搬機、台車型のキャリロ

――それが台車を自動化したキャリロの開発につながったわけですね。

「倉庫の屋内の物流をやろうと思ったんです。屋内なら歩行程度のスピードですから安全面も問題はない。製品になると思いましたね」

――これまでに蓄積した自動運転の技術を駆使すれば、レベル4に当たる無人運転の台車の開発の難度は低いと。

「物流業界は慢性的な人手不足です。ニーズは必ずあると思いました」

カメラとレーザーセンサーで認識を司るロボビジョン、障害物を判断し、操作の信号をモータに送るアイザック等。自動運転の技術を搭載すれば、歩行速度程度のレベル4の無人自動運転の実用化は十分、可能だった。

屋内自動運搬機、キャリロの発売は2016年。台車型のキャリロは屋内の床に配されたランドマークを識別しながら自動で移動し、荷物を搬送するタイプ。作業者が押す台車の後ろを何台もの台車が追従する、カルガモ型のタイプ等がある。

キャリロを採用した企業は現在、約300社。病院の薬剤運搬や配膳を行うデリロトラクターや重い荷物を自動配送するデリロトラック等、自動運搬車のバリエーションも増えた。

出典:ZMP社のプレスリリース

創業以来のテーマ“便利さ”を満たす

キャリロの開発は創業以来、十数年間のテーマだった“便利さを満たすロボット”の製品化に成功したことを物語っていた。と同時に、谷口恒のイメージは堰を切ったように広がっていく。彼は言う。

「屋内よりも本当は屋外の物流をやりたかったんです。人が触りたくなるような配達ロボットを作って、商品を自宅に届ける」

起業してほどなく製品化した人型ロボット、二足歩行の「ヌーボー」は“楽しさ”をアピールした。屋内運搬用のロボットでは”便利さ“を満たすことができた。次はこの二つを合わせ持つ製品はできないか。そもそも“楽しく便利な社会を作る”ことは会社の理念である。

商品を家に届ける宅配ロボは、“楽しさ”と“便利さ”を兼ね備えたものにしたい。

2017年に発表された無人宅配ロボ「デリロ」は身長約108㎝、ボディには目玉が配されている。

公道を使った実験では「こんにちは!」「お元気ですか?」と声を出して目玉をくりくりさせ、歩道を進むデリロを下校途中の子供たちが取り囲む。すると「今お仕事中だから道をあけてくれませんか」と、ウルウルと涙目になるように設計した。そんなデリロを前に子供たちは素直に道を譲ってくれる。谷口は言う。

「ブザーを鳴らすのもかわいそうだし、表情を付けることで、周りの人たちと円滑なコミュニケーションができます」

出典:ZMP社のプレスリリース

“歩行速ロボット3兄弟”

触りたくなるような“楽しさ”と、“便利さ”を備えた無人宅配ロボ、デリロの実証実験は次々と行われた。目黒区内のオフィスビルではオフィスワーカーへの弁当配送、店舗の商品のビル内の回遊販売。それにより数十台のロボットが同時に動いても、最適に稼働することが裏付けられた。東京都中央区佃、月島、勝どきの27店舗が参加し、5000戸を対象に公道を使った出前サービスも実証した。

デリロに続き、人が乗れるモビリティロボの「ラクロ」、無人警備・消毒ロボ「パトロ」を開発。2022年から3つのロボットを“歩行速ロボ三兄弟”としてアピールしている。

過疎地の買い物難民、深刻な問題の解決へ

今年4月の道路交通法の改正で、歩行速ロボットの公道の使用が大幅に緩和された。ZMPも参画し昨年、発足したロボットデリバリー協会は、22年を「ロボットデリバリー元年」と位置付ける。近未来の宅配ロボの活躍について、谷口恒は一つの構想を語る。

「デリロが必要なのは過疎地の人たちです。限界集落まではいかないが、人口500人未満の集落は全国にたくさんあります」

そんな村落はスーパーやコンビニが遠方にあり、車でないと行けないが、高齢化で運転がままならない現実がある。買い物難民は深刻な問題だ。デリロを使えば全国の買い物難民の負担を軽減できると、谷口は言葉を続ける。

「公民館でもいい、商品の在庫を置く機能を持たせた倉庫を置く。そこに定期便で物資を搬送する。ユーザーがスマホで注文した商品を一人のスタッフがロボットに詰め込み、宅配ロボが自宅まで届ける。500人程度の集落なら無人の宅配ロボが2~3台もあれば、十分に機能します」

深刻な社会の課題を解決する、そんな製品の製造メーカーの成長の幅は大きい。

「創業30年後の2031年には数千億円の売り上げを目指す」

現在の売上げの数百倍の目標を言葉にする谷口恒だが、あながち大風呂敷を広げているとは思えないのである。 

取材・文/根岸康雄

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