日本人にとって身近な海藻が食料・環境問題を解決するかもしれない。代替食に利用される大豆ではなく、なぜ海藻なのか。
その理由のひとつは「ブルーカーボン」といわれる海洋植物の二酸化炭素吸収システムだ。陸上の植物が吸収するCO2が約19億tに対して、海洋全体で約25億t、そのうちブルーカーボン生態系によるCO2吸収量が約11億tであることがわかっている(※)。ブルーカーボンは1000年以上にわたって海中にとどまるので、気候変動対策としても有効だ。
それだけが海藻が関心を集める理由ではない。代替食や新たな食品としての可能性も評価されている。日本で海藻の養殖生産を行ない、海藻を使った飲料や調味料を販売するシーベジタブル・友廣裕一さんは次のように語る。
「日本近海だけでも、約1500種の海藻が存在します。味の問題を抜きにすれば、ほぼすべての海藻は毒がなく、食べられる。しかし、食材として流通するものは20種類程度で、まだまだ海藻には食文化が広がる余地があるんです」海外では海藻の持つ旨味を生かしベーコンにするという事例も。しかし、海藻も有限だ。
「〝磯焼け〟という海藻が生えなくなる現象が日本近海でも頻発しています。藻場(海藻が自生する場所)がなければ、魚が育たなくなる。海藻の新たな消費を促し、それを元手に藻場を守ることで海の生態系を豊かにし、結果的には魚の減少を防ぐことにもつながります」
様々な可能性で注目され、昆布やわかめなど日本人に身近な海藻だからこそ、その背景を知って食べることが本当の〝エシカル消費〟につながっていくはずだ。
海藻を発酵させて作ったノンアルコール飲料
シーベジタブル『海のワイン』
1杯600円(参考価格)
シーベジタブルが初めて開発した海藻由来のノンアルコール飲料。海藻そのもののおいしさを生かすため、使われているのは海藻、水、砂糖のみ。爽やかでフルーティーな味わいが特徴だ。
〈 なぜ作った?〉海藻は主食にはならないからこそ「こんな海藻の食べ方・使い方があったのか」と意表を突く新しい食べ方を提案しようと開発がスタート。
〈 どう活用した?〉お茶を発酵させて作るコンブチャと同様の原理を採用した。海の植物である海藻に糖分を加えて2か月ほど発酵させている。
汚臭の原因にもなる漂着海藻を有効利用
ミスターオレンジ『プチル』
680円(110g)
漂着海藻から作られる粒状のゼリー食品。単体では無味だが、醤油やソースなどに漬け込むことで味つけする。様々な料理にプチッと弾ける食感をプラスする。
〈 なぜ作った?〉漂着海藻は長時間放置すると腐敗が進み悪臭を放つゴミとなってしまう。食材として利用し、食品ロスと悪臭を改善する。
〈 どう活用した?〉ゼリーを漂着海藻から取れるアルギン酸をベースにした膜で覆っている。プラスチックの代替としても活用できる。
「大豆フリー」で作られたシン調味料
シーベジタブル『青のりしょうゆ』
2430円
海藻を発酵させて作った大豆不使用の新しい調味料。醤油のような味ではあるが、よりまろやかな後味が特徴。また、米麹で仕上げているためグルテンフリーを実現。
〈 なぜ作った?〉海藻の消費拡大を目指し、日本の食文化でよく使われる調味料の代替を狙っている。今後は味噌なども発売予定だ。
〈 どう活用した?〉タンパク質を多く含む「スジアオノリ」を生かし、醤油と同じ工程で発酵させている。開発には約1年かかった。