京セラが個人向けスマートフォンからの撤退を決めました。半導体や電子部品などの主力事業に経営資源を集中するためで、2025年3月末でコンシューマー向けの京セラ端末は店頭から姿を消します。
同時期にバルミューダが携帯端末からの決定を発表しました。バルミューダフォンの製造は京セラが担っており、両社の撤退は合意の上で進められていたのでしょう。
国内ではシャープがスマートフォン市場で高シェアを握っていますが、順風満帆とは言えません。日本の携帯電話産業は転換期を迎えています。
一世を風靡した「京ぽん」を世に送り出す開発力
京セラは1988年に携帯電話事業に参入。2004年に発売されたPHSのAH-K3001Vは、フルブラウザを搭載した端末で、PCサイトの閲覧ができるという画期的な商品でした。この商品は「京ぽん」という愛称で親しまれ、落ち目だったPHS市場の再興に一役買いました。
スマートフォンにおいては、コンクリートへの落下試験や耐海水試験をクリアした「TORQUE」など、他社とは異なる独自路線を切り開いていました。
しかし、業績面では携帯電話とスマートフォンが重荷になっていました。京セラの2023年3月期のコミュニケーション事業の売上高は前期比10.3%増の2,077億円と2桁増だったものの、117億円のセグメント損失を出しています。
京セラの主力事業である半導体の利益率は18.6%、産業・車載用部品が12.4%、機械工具が7.5%。しかも、コミュニケーション事業の売上高は全体の1割程度で、足をひっぱる完全なお荷物事業になっていました。
コミュニケーション事業は、コンシューマー向け携帯電話からの撤退で、2024年3月期には早くも利益を出せるようになり、2026年3月期には7.0%程度まで利益率を高められるとしています。
売上高が1年で7割減少したバルミューダフォン
バルミューダは2021年5月にスマートフォン事業への参入を宣言し、同年11月にリリースしました。大型化するスマートフォン業界の風潮に逆らうような小型で丸みを帯びたデザインは、バルミューダらしい高いデザイン性を有していました。
その話題性もあり、販売から間もない2021年12月期の携帯電話端末の売上高は28億4,700万円となりました。しかし、2022年12月期は8億6,800万円まで縮小しています。わずか1年で7割も減少したのです。
※決算説明資料より
バルミューダは扇風機やトースターで一躍有名になった家電メーカー。競合他社にはない高いデザイン性で、他の家電でも代用できるものをあえて買うという消費行動を起こしました。
スマートフォンでもデザイン性で差別化を図ろうとしましたが、価格が10万円を超える割にバッテリー容量が少ないことやカメラの性能が悪いなど、機能性があまりに劣っていました。発売からわずか1年半ほどでの撤退となりました。