すべてが手の内にあると感じさせるスリム、軽量、コンパクトなトライアンフ
国産のカワサキW1やヤマハXS650など、バーチカルツインエンジンの魅力的なモデルを知っている世代にとっても、懐かしく感じる佇まい。
リターンライダー宣言するのはいいが、心配になるのは“スキルの低下”。だが若かりし頃はビッグバイクを事も無く乗っていた感覚だけは健在。このスキルとプライドのせめぎ合いによって、バイク選びは難航する。安全を考えれば「取りあえずは小さいバイクで」となるところだが、そんな諦めから解放してくれるのが「トライアンフ・スピードツイン900」だ。
トライアンフといえばオートバイブランドとして120年あまり(自転車製造も入れれば136年)の歴史を持つ英国のメーカーで、そのブランド力は申し分なし。スピードツインは2023年に新たに登場したブランドだが、実はこれまでベーシックなロードスターモデルとして人気だった「ストリートツイン」の名前を変更したモデルである。これまでも高い人気を誇るクラシックカスタムバイクだっただけに、ネーミングを変えた新鮮度の高さと、さらなる細部の進化によってその魅力度は確実に上昇している。
一方で古くから作り続けられ、多くに人たちに愛されてきた“バーチカルツイン”と呼ばれる直立2気筒エンジンという伝統的なスタイルは不変。この佇まいを見ただけでもネオクラシカル好きには安心材料となる。
そんな安心感を抱きながら新しいスピードツインに跨がる。スリムなボディとシート高765mmという低さによって可能になるライディングポジションは地面にも足がピタリと着き、それだけで一気にこのバイクのすべてが手の内にあるような感覚になる。すかさずクラッチをミートして走り出してみると車重217kgのストリートツインをヒラリヒラリとコントロールできるのである。その感覚たるや中型バイクの手軽さであり、ビッグバイクが持つ壁を一切感じさせないのである。
それでも65馬力を発生する900ccのバーチカルツインエンジンはゆとりあるパワーで心地よい加速感をプレゼントしてくれるからまったくストレスはない。大排気量のバーチカルツインエンジン特有の振動とエンジンサウンドを伴って、まさに生き物の鼓動のように、回転を軽やかに上昇させる加速フィールは、快感のひと言。手の内にスッと入る車両感覚と、そしてビッグバイクならではのレスポンスの良さが、すべてのネガを消してくれるのだ。おまけに英交流クラシカルは、ライダーのファッションにも大きな制約を与えることはない。ネオクラシックといったブームだけでなく、まずは肩肘張らずに乗れることが嬉しい要素となる1台なのだ。
押し出し感は少ないが見るからに軽快でフットワークの良さそうなスタイルは市街地でもファッショナブルなシーンにも似合う。LEDリアライトを搭載してい安全性も高い。
シンプルな丸型アナログメーターにはLCD多機能ディスプレイを装備。ライディングモードはROADとRAINの2種をセレクト可能。
スリムですっきりとしたエキゾーストは流れるようなラインを形作り、独特のブリティッシュツインサウンドを響かせる。その豊かで心地よいサウンドがライダーは全身で感じ取ることになる。
正面から見るとボディのスリムさと、そしてコントローラブルで軽快な運動性能がよく理解できる。
(スペック)
モデル名:トライアンフ・スピードツイン900
価格:1,155,000円~(税込み)
ボディサイズ(mm):全長×全幅×全高:未公表×780×1,115
ホイールベース:1,450mm
シート高:765mm
車重:217kg
駆動方式:チェーン駆動
トランスミッション:5速MT
エンジン:水冷 並列2気筒SOHC
最高出力: 48kW(65ps)/7,500rpm
最大トルク:80Nm(8.2kgm)/3,800rpm
燃費:5.1 l/100 km(メーカー公表値・100km走行時の消費燃料)
問い合わせ先:トライアンフコール 03-6809-5233
文/ 佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。