中国では大手企業が独自の大規模言語モデルを開発し、2023年春から続々とリリースしている。そこに垣間見える覇権争いについて、中国のAI事情に造詣が深いジャーナリスト・浦上早苗さんが解説。各社の戦略についても分析してもらった。
経済ジャーナリスト
浦上早苗さん
西日本新聞社記者を経て、中国・大連に国費博士留学。中国の新興企業やマス向けコミュニケーションマネジメントに関する専門家。
バイドゥもアリババも企業への提供が事業の柱
中国では3月にバイドゥ、4月にはアリババが、それぞれ自社開発の大規模言語モデルと、それを使った会話型AIツールをリリースした。両社の基本的な戦略は、OpenAIのように大規模言語モデルと会話型AIツールをビジネス基盤として提供することだと浦上さんは見ている。
「バイドゥは、検索エンジンを運営する一方で『AI企業になる』と宣言し活動を続けてきました。バイドゥが提供するAIはスマホやPCの『OS』と同じ位置づけで、新しいサービスを生み出すツールとして提供しようという思惑があります。一方、アリババはECサイトや旅行代理店であり、会話型AIを顧客へのレコメンドなどに活用したり、企業向けにカスタマイズして提供したりすることなどを計画しています」(浦上さん)
ただ浦上さんによれば、両社をはじめとする中国企業の生成系AIが海外に進出する可能性は現時点で極めて低いという。
「ただし、中国の自動車企業などが存在感を示している東南アジアでは、現地のIT企業と提携し、言語モデルやAIツールを積極的に提供していく可能性も考えられます」(浦上さん)
百度(バイドゥ)「文心一言」
(Ernie Bot/アーニー・ボット)
2019年、内部で限定公開し、強化学習やテストが進められてきた生成系AI「文心一言」。2022年3月に発表された時点では、正確性や性能面から期待外れだという声があったものの、多数の企業が導入を表明。中国国内の期待度は総じて低くない。
〈浦上’s予測〉Web検索技術が強み!650社の協業企業に向けてカスタム提供か?
文心一言の発表時、バイドゥの李CEOは「企業の独自AIモデルやアプリ構築のサポートする」ことなどを掲げた。Web検索のデータ蓄積や技術力をもとに、様々な事業領域へ文心一言を提供する考えだ。
阿里巴巴(アリババ)「通義千問」
(Tongyi Qianwen/トンイー・チェンウェン)
アリババでは、個人向けからB2B向けまで様々なEC事業を展開しているほか、マーケティングや物流、エンタメコンテンツ、決済などのサービスも展開中だ。これらのサービス内に会話型AIを実装し、売り上げの拡大や顧客エンゲージメントの向上を目指そうとしている。
〈浦上’s予測〉幅広い事業展開が強み!越境ECの販売店も続々と実装?
アリババが開発したのが「通義千問」という大規模言語モデル。中国国内の顧客企業や開発者に向けてAPIを提供し、OpenAIのようにアプリの開発などに役立ててもらおうとしている。
生成系AIの開発を表明している主な中国企業
商湯科技(センスタイム)
同社は、自動車用の認識システムなどを手がけているIT企業。AI自らが開発に携わるという大規模AIモデル「センスノバ」を2023年4月に発表したばかり。
科大訊飛(アイフライテック)
音声翻訳の技術力では世界トップレベルを持つテクノロジー企業。AIによる自動翻訳機も手がけており、同分野における中国国内のシェアは8割を占める。
京東(ジンドン)
産業用向けの対話型AIとして「ChatJD」を開発。企業の財務分析支援やEコマースサイトの運営支援に活用する想定で、ほかのAIとの差別化を目論む。
取材・文/久我吉史
ChatGPTのすべてを完全網羅!DIME最新号はAI検索の超活用術、豪華付録は楽しく光るBluetoothスピーカー
曲調に合わせて踊るように4色のLEDライトが点灯するおしゃれなガジェット。
スピーカーの中央から放たれるサウンドはもちろん、LEDの光り方からもリズムを感じ取れるから、音楽を聴いているときの高揚感は格別です!
大特集は「ChatGPT/Bing/Google Bard AI検索超活用術」。企画書の作成から調査分析、営業ツール、Exel関数、資産運用、ビジネス英会話、リスキリング、アプリ開発まで、これを読めば、ChatGPTの超便利な活用法がまるわかり!あなたの欲しい回答を導き出すベストプロンプトを詳しく解説。まさに超保存版です!!
■第1特集
Google Bard、Bing、CahtGPT、AI検索超活用術【保存版】
2022年11月に公開されたOpenAI 「ChatGPT」をはじめ、マイクロソフト「Bing」やグーグル「Google Bard」が話題を集めているAI検索。本特集では、それらをビジネスシーンや日々の暮らしの中で 活用するための奥義を大公開! 賢者が実践している〝欲しい回答を得る〟ためのコツや、知られ ざる便利な使い方を習得すれば、仕事のスキルや効率が格段にアップするはずだ。
ChatGPTとExcelを組み合わせて退屈なデータ処理を自動化する方法
5月16日(火)発売の雑誌「DIME」7月号では、今話題の「ChatGPT」をはじめとするAI検索の超活用術を総力取材。企画書づくりや議事録作成の具体的なポイン…
■第2特集
275万円のお得な「補助金」リスト付き!
最新リフォーム案内
住まいづくりの選択肢として根強い人気を持つリフォーム。不動産業界に占める市場も大きく、施工会社や魅力的な商品も豊富に揃う時代になった。では、本当に住み心地がよい部屋はどうすれば作れるのだろうか。昨今の光熱費高騰をカバーする省エネリフォームの好例から、自宅でも快適に作業できる仕事部屋、家計の大きな助けとなる補助金が使える施工法まで!〝今やらなきゃ損になる〟リフォームの新スタンダードを一挙に紹介!
■第3特集
賢い家計マネジメントで 年間50万円 カット!
固定費削減の最適解
物価高・値上げが家計を圧迫している。
そこで実施したいのが、固定費の見直しだ。今回は、光熱費/通信費/保険料/サブスクの4つのカテゴリーをピックアップ。4人家族の尾得家をモデルに、固定費見直し術を学ぶ!
■MONEY HACKS
2023年後半に復活!? 日本株逆襲のシナリオ
■ENTERTAINMENT HACKS
プレ値続出のレトロゲーム市場 最新レポート
■短期集中連載!話題のVTuber犯罪学教室のかなえ先生
#教えてかなえ先生
■TREND WATCHING
・Z世代がハマるカセットテープの深イイ魅力
・食糧問題も環境問題も解決する美味しい食材 海藻の魅力
※電子版には付録は同梱されません。
ご購入はお早めに!
構成/DIME編集部