稲盛和夫氏のように人の心を動かせるリーダーを目指す
そんな彼が理想とする経営者は京セラ創業者の故・稲盛和夫氏。「生き方」や「心」など名著を読んで、人の心を動かす重要性を再認識しつつ、現状に満足することなく上を目指すように促していきたいと考えている。
「今の湘南は6シーズン連続J1ということで、J1に在籍していることだけで満足してしまっている人もいるかもしれません。でも僕らがそれに満足してしまったら前進はない。会社のスタッフは集客やスポンサー増に取り組み、クラブ規模拡大により力を注ぐ必要があります。今は年間強化費12億円で何とかやりくりしていますけど、トップに上り詰めようと思うなら、その規模を拡大しないといけない。地道にやっていくしかないですね」とまずはフロントスタッフと一緒に成長の努力を惜しまないという。
一方で、現場は目下、リーグ7戦未勝利という厳しい状況にいる。それでも「J1残留」だけを考えていたら、躍進はない。可能な限り、上の順位を貪欲に狙っていくことで、さらなる成長が期待できるのだ。
自身の現役時代には後悔もあるという坂本氏。その経験を若手に伝えていく覚悟だ((c)SHONAN BELLMARE)
「かつて選手だった僕自身のキャリアはJリーグで500試合近く出場して、多くの試合に出ることはできたものの、もっと高い意識を持っていればよかったと痛感します。
自分が高3だった時の選手権のキャッチフレーズが『キミ達を、2002年に見たい』だったんですけど、本気でそこを目指していた俊輔のようなトップ選手と僕とでは意識の差が物凄く大きかった。もちろん実力もありますが、その後のキャリアを見れば一目瞭然ですね。だからこそ、今の若い選手に同じ後悔をしてほしくない。マインドセットを変えられるように努めていきます」
選手時代から気さくで明るく人当たりのいいタイプだった坂本GMだが、年齢を重ねて、より人間的な幅が広がった印象だ。温かみのある人柄は地域に支えられる湘南にピタリと合う。新リーダーによって老舗クラブはどう変化するのか。ここからの動向が楽しみだ。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。