タクシー業界は慢性的な人手不足だと言われている。とくに都市圏の供給不足は深刻で、車があっても乗務員(ドライバー)が足らず、効率的な運行をしづらいことが課題になっている。
コロナ禍とタクシーならではの働き方の関係
背景に新型コロナウイルスが大きな影響を与えていることは明らかだ。コロナ禍になった途端、街から人が消え、タクシーで移動をする人が激減。休業補償を出すなど対応した会社もあるようだが、なかなか出口が見えない中、「もうここで見切りをつけよう」と、業界を去るケースが増加した。
そして今、ようやく新型コロナが5類になり、2023年のGWは各地が久しぶりに賑わった。海外から日本にやってくる人々は、さらに増えると予想されている。あとは乗務員の採用が進めば街に繰り出すタクシーが増えるのだが、実際はそう簡単な話ではない。タクシーならではの働き方がネックになる例があるからだ。
たとえば、もっとも一般的な隔日勤務だと8時~翌4時30分を月に11~13回/月。日勤なら8時から18時を22~24回/月、夜勤なら18~6時を22~24回/月などが基本になる。いずれも安全運行のための休憩が義務付けられているものの、特殊な勤務体系と歩合制、接客、地理などの不安から、新規・中途共に二の足を踏む人が多いようだ。
流しをしない営業スタイルが新たな働き方を提唱
そんな中、タクシーアプリ『GO』を展開するGO(旧社名Mobility Technologies)と日本交通が、アプリ注文のみを受け取る車両『GO Reserve(ゴーリザーブ)』と、その車両に乗務し、供給不足になる特定の時間帯やエリアをカバーするための乗務員『GO Crew(ゴークルー)』を、2023年3月より順次稼働している。これは業界の人材獲得に向けた新たな取り組みとして注目されており、その進捗状況をGO 次世代事業本部新規ビジネス部萩原修二さんに聞いた。*データは2023年4月末の時点。
――現在(2023年4月末時点)の乗務員の人数と台数、稼働状況を教えてください。
約20名/台で稼働していまして、とくに需要が高まる朝の通勤時間帯を中心にシフトを組んでいます。おかげさまで間を開けずにお客様にご乗車いただいている状況でして、この年末までに車両を30台、ドライバー90人の体制を目指しています。そして東京都内で供給側の教育・管理・運用の検証、乗車されるお客様の乗車体験検証を行い、全国の主要都市でも展開を検討していく予定です。
――予約を受けてからGO Reserve出発、帰庫までの流れはどのようになっていますか?
出庫後は『お客様探索ナビ』というAIによる需要予測ナビゲーションに従い運転を行いながら、お客様のご注文を待ちます。GO Reserve車両は、GOの注文の中でも、行き先入力がされたGO Pay決済注文のみを受け取る仕様となっており、該当注文が入り次第お客様の元へ向かいます。
お客様のご乗車後は基本的にはナビゲーションシステムに沿った形で目的地まで運転を行います。GO Pay決済でのご注文となるため、車内での支払いや領収書の受け渡しといったやりとりはなく、目的地到着後は合計金額の確認を口頭で行い、降車いただくという流れになります。
なお、GOの一部注文が自動で振り分けられているため、お客様がGO Reserveを指定しての注文はできません。
――GO Crew乗務員さんからの反響はいかがでしょう
これまで乗務員という働き方に興味はあったが、タクシー業界特有の隔日勤務という働き方がネックとなっていたり、運転は得意でも都度ルートを考えながら走行することに自信がない、お客様を街中で探す流し営業や歩合制という働き方に不安を感じていた方からも応募をいただいており、裾野を広げることができています。
実際に働き始めた方としては、週20時間以上の稼働をされる方も多く、時給制で確実に稼げるという所に魅力を感じていただいています。ご自身でスキルアップを目指して頑張られている方もいらっしゃいますし、乗車後のお客様レビューなど、接客にやりがいを感じて働いていただいている方が多くいらっしゃいます。
現在の乗務員の約半数が元乗務員・二種免許をすでにお持ちの方で、残りが副業ありきで未経験からチャレンジされている方となっています。タクシーの隔日勤務や歩合制がフィットしなかった方、運転は好きだけど地理に自信がないため乗務員には踏み切れなかった方が多く、年齢層は20~60代まで満遍なくいらっしゃいますが、みなさんご自身のペースでシフトに入っていただいています。
――未経験からGO Crew乗務員になるまでに想定される時間について教えてください
二種免許の取得後、運輸規則に基づき、接客・サービスや地理、保安関係について座学と実地で学ぶ10日間の法定研修を行います。早くて約1か月、長くとも2か月程度で乗務開始となっています。
――お客様からの反響はいかがでしょう
インパクトのある車体ということもあり、乗車されていないお客様からもかっこいい! などポジティブな反響をいただいています。丁寧な接客や安全運転などを高く評価いただくことが多く、一方で経験不足による地理の部分など、今後も磨き続けなければならない部分もあるので、教育体制を中心にブラッシュアップを行っています。
柔軟な対応が乗務員不足を解決させる
アプリやカーナビ、キャッシュレスによりタクシー乗務員の働き方はかなり改善される傾向にある。週20時間に満たないパートライマーとしての働き方も選択できることも、GO Reserve/GO Crewの強みだろう。
もし街で青い車体を見かけたら、ぜひ注目していただきたい。
取材協力:GO/日本交通
取材・文/西内義雄