■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、2023年ハイエンドスマホの最先端について会議します。
新しいセンサーを搭載した「Xperia 1 V」
房野氏:2023年5月に入ってスマートフォンの新モデルが続々発表されました。今回はXperiaとGalaxyについて語っていただきたいと思います。
石川氏:Xperiaのフラグシップモデル「Xperia 1 V」が出てきます。
石野氏:SIMフリー版の同時発表が話題ですね。
石川氏:そう。端末の進化としては正統というか、まぁ、そうだよねという感じ。新しいチップを搭載して、カメラもちょこっと進化して……
石野氏:ちょこっとはひどい(笑)
法林氏:メインカメラはセンサーが新しくなったからね。
石川氏:センサーが新しくなって、他社と同様にピクセルビニング、画素をまとめて明るく撮影できるようになった。
石野氏:Xperiaはピクセルビニングをしたのが初めてで、かつセンサーが新しく画素構造がフォトダイオードとトランジスタとの2層に……
石川氏:内蔵型だったのが分かれた。
石野氏:1インチではないんですけど、センサーサイズが約1.7倍とかなり大きくなり、さらにフォトダイオードとトランジスタを2層式にして感度を上げ、ということで、かなり暗所に強くなっている。これまでセンサーサイズや画素の競争だったんですけど、新たにフォトダイオードという機軸を盛り込んできた。
石川氏:ソニーらしいなと。
法林氏:僕が思ったのは、スマートフォンでデジタルカメラを作る気はなくなったんだなと。ようやくスマートフォンのカメラを作る気になったんだという感じがしました。ピクセルビニングはスマホ技なので、まさにそう。
石川氏:そうですね、ToFセンサーもなくして「AIで判断できる」と。コスト削減の意味もあるかもしれないけど。
石野氏:説明会では「今までAIをやっていないと言われてましたが」と前置きしてAIを強調していましたね。AIをやっていないと言われていたことへの反省の意味もあると(笑) Xperiaは確かに色味や絵作りは見たものに割と忠実というか、デジカメの「α」の絵作りを目指してはいるんですけど、AIを使っていないわけではないってことを改めて強調していました。
法林氏:Xperiaって、もうソニーを退職したけれど(ソニーモバイルの社長が)岸田光哉氏さんの代となり、Xperia 1のシリーズになってから、いかにして〝Xperia α〟を作るかにすごく注力していた感があるんですよ。オーディオもそうなんですけど、本物が持っているオーディオの性能をいかにXperiaに持ってくるか、みたいな感じがすごく強かった。特にカメラはそれが強かった。でも、それでは響くユーザーが限られる。ただですらαシリーズなどの一眼カメラのユーザーが少なくなっている状況で、その人のサブカメラとしてXperia 1を選ぶって、どれだけ小さい市場なんだよって感じだった。それがようやく「αの世界でやっているような絵を、スマートフォンで手軽に撮れますよ」っていう言い方をし始めた。なるほど、ようやくαの呪縛から解き放たれたという感じ。
石川氏:面白いのが、今、Xperiaの開発のトップはαを手がけてきた人なんですよ。トップになって、α色がより強くなるかと思いきや、意外や意外、スマホカメラ的になってきた。
法林氏:相当、言われたんだと思いますね。去年の販売台数の減り方、特に「Xperia 1」は半端じゃなかったと思うんですよ。すごく余ったはず。
石野氏:「Photography Pro」が縦表示に対応するのが衝撃的でした。やっぱり縦で撮りたいという要望が多かったみたいですね。特にVlogerとか、縦撮りの映像をTikTokなどに配信している人たちがいて、その人たちから「横向きでしか撮れないなんてありえない」という意見があるみたいで。
Xperia専用フォトアプリ「Photography Pro」では縦画面での操作も可能に
法林氏:それは当たり前だよね。あと、商品紹介用モードみたいなのができたね。モノを持って撮ると、顔にピントが合っちゃうのが……
房野氏:そのモードだと商品の方にフォーカスが当たる。
石川氏:ソニーは「VLOGCAM」で成功している。VLOGCAMに商品紹介モードがあるので、そこを取り込んできた感じがする。ようやくネットやSNSの支持を狙い始めてきているのかなと。
石野氏:少し変わった感じはします。余裕が生まれてきた。
法林氏:Xperia 1 Vはようやくその狙いが出てきたかなと。
石川氏:純正ケースも縦に置けるんですよ。