戦後日本とインフレの関係
日本経済とインフレの関係がどのようであったかというと、実は戦後の日本経済は半世紀近くのあいだインフレを経験してきた歴史があります。
代表例として、1970年代の石油ショックの時代には年率20%ものインフレが発生しています。
しかし1990年代以降の日本経済の停滞と同じく、物価水準も下落傾向が現在まで長期にわたって続いており、これは先進諸国では珍しい日本ならではのケースともいえます。
こうした長いデフレは経済にマイナス効果となる現象であり、緩やかなインフレが続くことを目指して、他国の中央銀行と同じく日本銀行のインフレ率の政策目標も2%程度としています。
戦後の日本で象徴的なインフレといえば1980年代後半のバブル経済です。
特に1988年に生じた土地の値上がり益(キャピタル・ゲイン)は、同年のGDPの約45%相当になる巨額なものでした。その後、1990年代に入ってからの急落はバブルの崩壊といわれ、主な要因は土地を担保にした多額の融資が崩壊したことにあります。
こうした構図は日本に限らず、世界各国でも度々発生しています。
今となっては当時はバブルであったといわれますが、バブルの渦中にいる人々の大半はバブルだと気付かないものであり、それは株式市場の加熱している最中、ある日突然ブラックスワンがやってきて大暴落が起きる現象とも良く似ています。
そうならないためにも、過度なインフレを抑制することが中央銀行が行う金融政策に求められているともいえるでしょう。
おわりに
今回はインフレを軸にその影響力について考察していきました。
今後も日本や米国の経済動向がどうなるのか、特に短期相場の場合はマーケット動向を正確に当て続けることは難しいでしょう。
しかし長期で見れば、どの国やどの産業が伸びているのかはある程度の予測ができるはずです。そうであれば不測の事態に備えて分散投資を心がけておくことが資産運用ではより大切ではないでしょうか。
日本経済は「失われた30年」とも表現されていますが、今後の日本経済はさらに厳しいものとなるかもしれません。
もちろん今後新たな産業が日本で勃興する可能性もゼロではないでしょう。
とはいえ、私たち個人が資産運用をする上で心がけることはリスクヘッジです。
不測の事態に備えたポートフォリオであれば今からでも準備を進めることができるはずです。
今回はインフレが社会にどのような影響をもたらすのか、解説させていただきました。
文/鈴木林太郎