5月6日、「NTTファイナンス」を名乗る自動音声の電話が筆者のスマホにかかってきた。
有料サイトの料金が1年間も未納で、近々筆者に対して法的措置を取るという。
筆者はいくつかの有料オンラインサービスと契約しているが、いずれも見落としなく月額もしくは年額料金を支払っているはずだ。しかも、このNTTファイナンスからの電話は番号非通知。自動音声とはいえ、限りなく怪しい。
「1」をプッシュすれば、オペレーターにつながるという。
もしも筆者が至極普通の会社員だったら、ここで電話を切っていただろう。しかし、仮にも「テクノロジーライター」を自称して禄を食んでいるのだ。ここは多少のリスクを犯してでも検証し、その結果を広く世に伝えるのが筆者の使命。
というわけで、「1」を押してみた。
本物っぽい自動音声ガイダンス
この「NTTファイナンス」の番号非通知の電話は、大手紙や地方紙が既に取り上げている。
ここでは岐阜新聞Webの記事を引用したい。
岐阜県警は、実在する金融会社の名前をかたり、自動音声ガイダンスで個人情報などを聞き出そうとする、不審な電話の音源を公開した。未納料金名目での現金詐取などが目的の電話という。
(中略)
電話を受けたのは、県警で詐欺被害の抑止を担当する生活安全総務課の警察官で「警察官である自分でも一瞬、不安に感じた」と振り返る。NTTファイナンスは実在するが、同様の案内は行っておらず、同社もホームページで注意を呼びかけている。県警の担当者は「このような電話があれば詐欺と思って相手にせず、警察に連絡を」と話している。
(岐阜新聞Webより)
この記事の日付は今年3月28日。筆者のスマホに同様の内容の電話がかかってきたのは、冒頭に書いたとおり5月6日である。つまり地方紙で取り上げられてから1ヶ月以上経っているにもかかわらず、「偽NTTファイナンス」はまったく懲りていないということだ。
もちろん、本物のNTTファイナンスは以下のような注意喚起を公式サイトで出している。
自動音声ガイダンスにより、「NTTファイナンス」をかたり、ご利用中の回線を突然利用停止する旨を通知し、金銭を搾取しようとする不審な電話がかかってくる事象が発生しております。
NTTファイナンスでは、自動音声ガイダンスを用いて、契約状況に関する事項や、回線の利用停止を通知することは行っておりませんので、決して応じることのないよう、ご注意ください。
(NTTファイナンスより)
「NTTファイナンス」を語る自動音声の電話を本物のNTTファイナンスがかけることはない、という意味である。従って、そのような電話が来たら即座に切ってしまうのが一番。
しかし、筆者はこうも思ってしまうのだ。特殊詐欺対策とは、誰かが敢えてギリギリのところまで踏み込んで「偽NTTファイナンスのオペレーターはどのようなことを要求するのか?」を調査しなければならないはずだ。
自動音声の要求する通り「1」を押したら、どんな人間が出てくるのか。
というわけで筆者は勇気を振り絞り、偽NTTファイナンスのオペレーターと対峙することにした。
出てきたのはたどたどしい話し方の中年男である。