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究極の選択!「懲戒解雇か自主退職かどちらか選べ」と言われて退職した人の逆転復活劇

2023.05.12

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。

裁判事件をザックリ解説します。

Fish? or  Beef?

みたいな感じで「懲戒解雇になるかもよ?自主退職したほうがいいんじゃない?」みたいに迫ってきた事件です。

Xさんは懲戒解雇を避けるために退職届を提出して自主退職しました。しかし・・・納得できず訴訟を提起。

ーーー 裁判所さん、どうですか?

裁判所
「Xさんの勝ち!懲戒解雇できないケースなのにちらつかせて自主退職を迫ってるよね。だから自主退職は無効。会社はXさんに過去の給料も夏のボーナスも冬もボーナスも払いたまえ、数百万」と命じました。

以下、分かりやすく解説します(富士ゼロックス事件:東京地裁 H23.3.30)

※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話風でお届けします

登場人物

▼ 会社

・オフィス機器などの販売を行う会社

▼ Xさん

・女性(40歳)
・約20年勤務していた

Xさんのチョンボ

Xさんのチョンボは2つあります。

▼ チョンボ その1

勤怠システムへの入力時刻を変える。

・早い時間を入力したことが何回かあった 
 何時出勤したか忘れたときに幅のある時間のうち早い時間を入力
・夜、休憩をとれなかったときにその時間を加算して退勤時間を入力
などなど。

▼ チョンボ その2

外出旅費、通勤交通費の二重請求

究極の二者択一

これを会社が嗅ぎつけて事情聴取が始まります。〈人事部規律チーム〉が動きます。名前カタッ!風紀委員会みたいな感じですかね。

判決から会話を抜粋します。長くなりますが臨場感たっぷりなのでどうぞ。

Xさん
「100パーセント辞めたくない」
「減給でも出勤停止でも受けるので、解雇されるとこのご時世、病気のことや保険のこともある。こういうことをしていて言えることではないが、できれば解雇は避けたいと正直そう思って いる。仕事の重いのでも良いが、頂ければ信頼を回復したい」

上司E
「最終的には社長決裁だが、我々は事実を正しく伝えるのみ。 データだけみれば重大な案件だ」

Xさん
「本当に出来るのであれば避けたい」

上司E
「残りたいと言ってもストレートにご自身の責任の取り方があるはず。お金を返すというレベルではない。職を辞して懲戒解雇を避けたいのか、手続を進めるのか。そこをやるだけだ」

上司F
「こんな状態では社員として認められない。辞め方と去り方の違い」

Xさん
「会社だけは辞めさせないで下さい。逆に私はどうすればよいのか」

上司E
「残りたいというが、処分は口には出来ないが十分わかっているでしょ。我々は弁護士ではないけれども会社に残るのは厳しいと思 う。ただこの会社が好きでXさんも20年やってきた。自主退職であれば退職金は出る。全て会社の判断で結構ですというのであれば、それで 続を進めるしかない。やむを得ない」

Xさん
「どちらかを選択しなければならないのか」

上司E
「あなたのためを思って人事は言っている。会社に残りたい、これは寝言。あなたの進退をはっきりしてほしい。自主退職を申し出るの か、会社から放逐されるのか、決めて欲しい

Xさん
「この場では決められない」

上司E
「会社が持っている事実にかわりは ない。検討するも何もないのでは。考えさせて欲しいという猶予はない」

Xさん
「もう会社で仕事をすることはできないということですね。どんなに頑張っても」
「数か月間、無給で働かせてもらうというのでは」

上司E
「時間下さいはナイです。」

Xさん
「今週末まで時間を欲しい。自主退職、 解雇で退職金が違うということや、冷静に考えたい」

上司E
「冷静に考えるって何ですか。懲戒解雇は退職金は支払わない。会社は必ず処置をする。一番重たい結論になる可能性が高い。人事として経営に判断を委ねる」
「1週間待っても変わらないでしょ」

Xさん
「100パーセント近く解雇になるのでしょうか」

上司E
「100パーセントとは言えない。過去している。これは経験則で言うが懲戒解雇して いる。経営の判断だが、極めて近似性がある。決定しているとは言っていない」

Xさん
「懲戒解雇と自主退職、どちらが得か」

上司E
「天と地の差がある。重みも、傷も違う。世間の認め方も違う」

Xさん
「頭が真っ白なので1日考えたい、軽はずみに回答できない」

上司E
「1日待ってどうするのか。結果が出ているのにこの期に及んで、改めてその言葉を使いたい。判断できないのが疑問だ。今の結果があるのは、過去からの積み重ねの結果。 我々は救いの手を伸ばしている。」

上司F
「我々は人事。本来事実のデータだけをもって経営に判断を仰ぐべき立場だ」

社内の労働組合がテキトー

Xさんはその日の夜、社内の労働組合の役員に相談しました。

ーーー 労働組合さん、どう戦いますか?

労働組合の役員
「会社がそう言ってるなら、組合としては何もできない」

判決文より抜粋

戦う気、ズィ〜〜ロ〜〜!労働組合って社員(労働者)の味方なのに…。

こんな社内組合もあるので「こりゃダメだ」と感じたら社外のユニオンに相談してみましょう。

退職願を提出

その後もこまごまとしたやり取りがありましたが、最終的に約2ヶ月後にXさんは退職願を提出しました。

Xさんが訴訟を提起

Xさんの言い分はザックリ「懲戒解雇を匂わされたので退職願を出さざるを得なかった。この退職願は無効です。なので私はまだ社員です。給料やボーナスを払って下さい」というもの。

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