MVNO再興のカギは?
房野氏:楽天モバイルの0円プランがなくなって、MVNOの契約者数は増えたんですか?
石野氏:楽天モバイルから流出した分、しっかり増えてますね。ahamoやpovo、LINEMOと分け合っている感じです。
石川氏:某サブブランドの人に話を聞いたら、「楽天モバイルに取られた分は取り返した」と言っていました。むしろ、IIJは契約者数を増やしているし、NUROモバイルも2倍に増えていると言っています。値下げの影響もあって、通信料収入は下がっているけど、契約者数を伸ばしているところはあります。
法林氏:あとは、KDDIの通信障害の影響で、予備回線としての契約も増えた。2022年はキャリアやMVNOの間でユーザーの動きが目立った時期ではあったけど、少なくとも0円につられて楽天モバイルに移行した人は、一通り戻ったような状態です。
石野氏:楽天モバイルは月額が最低1080円になったので、そこまでお金を払いたくないという人が、数百円のプランを提供しているMVNOに移った形ですね。
石川氏:どうせお金を払うなら、もう少し安定して使えるMVNOで、1000円以上の月額料金を払っているという人もいます。
石野氏:楽天モバイルからの契約者の流出も今ではおさまった。転出しなかったユーザーは、お金を払ってもサービスを利用していいと思っている人たちで、楽天モバイルの契約者数は徐々に増えている時期です。
房野氏:となると、現在のMVNOの直接的なライバルは、キャリアのオンライン専用ブランドになりますかね。
石野氏:そうですね。あとサブブランドです。
房野氏:では、小容量・低価格のマーケットは形成されていて、シェアを奪い合っているような状態ですか?
石野氏:いや、先ほど法林さんがおっしゃっていたように、ソフトバンクとドコモの3G停波が控えているので、完全に小容量しか使わない人がMVNOやサブブランドに移ったわけではありません。通話メインの人たちが数百万単位で残っているので、ここは契約者獲得の余地になっています。各社通話プランを発表したり、対応策を打ち出しているところですね。
石川氏:どのキャリアも解約しやすくなったから、これから先、何が起きるかわからないですよね。楽天モバイルがまた値上げをするかもしれないし、ユーザーの流動性はまだまだ高いと思います。
法林氏:逆に、ある程度料金も下がってきているので、通信のつながり具合や通信速度といった、未知のリスクを負ってまでユーザーが動きにくい感じもある。ただし、一度でも転出した経験がある人は、また移行する可能性がある。楽天モバイルに移行した人は、MNOやMVNOに動く可能性があるよね。
楽天モバイルは利用料金0円をやめたことでユーザー数が減ったけど、ここからは自分たちの経済圏にいる人たちを大事にしたいと考えていて、グループ内のサービス連係を強めていくと思うので、そこは楽しみ。普段あまり移動範囲が広くない人は、自分の生活圏内で楽天モバイルがつながれば問題ないですからね。不安要素はあるけど、頑張ってほしいかな。
房野氏:今後、MVNOで契約するのはありだと思いますか?
石野氏:全然ありだと思いますよ。
石川氏:例えば、動画をたくさん撮影してアップロードする人なら、NUROモバイルの「あげ放題」のようなサービスは便利。自分も、海外に行くことがなければ、MVNOで十分だと思います。
石野氏:あと、予備回線としての契約ももちろんありです。KDDIとソフトバンクが予備回線のプランを発表していて、お店で契約できるのは確かに便利ですが、mineoのほうが使い勝手が良かったり、料金が安かったりします。こういったサービスが出てきたからこそ、MVNOの検討をしても良いでしょう。
法林氏:あとはホームルーターだね。MVNOに入りにくいなと思う1つの理由は、やっぱりキャリアのセット売りが強いという点。1回線につき1100円割引になるので、4人家族だと、ホームルーター代がほぼ0円になる。今までは在宅勤務だったので光回線が必要だったけど、出勤するようになっていらなくなるという人もいるはず。ユーザーが動く要素として、ここはあるかな。
石川氏:加えて、5月以降はナンバーポータビリティのワンストップ化が始まるので、ここからまたユーザーの取り合いが始まるかも。安く機種変更できると思って申し込んだら、知らない間に別の会社と通信契約していた、といった可能性もあります。
……続く!
次回は、MWCで注目の端末について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/佐藤文彦