学習塾は国内の産業の中でも競争が激しい業界の一つです。少子化で塾や予備校の潜在的なターゲット数が減少する中、進学率は上昇しており、大学入学者数は増加しています。学習塾は激しい生徒の取り合いを続けているのです。
塾は大手企業を中心としたM&Aが活発に行われていることでもよく知られています。今後も淘汰や再編が続く業界の一つでしょう。
学習塾を運営する会社の中でも、明暗が分かれてきました。勢いをつけている会社の一つがTOMASを運営するリソー教育。2023年3月期は5%の増収でした。冴えないのが城南進学研究社。2023年3月期は5%の減収を見込んでいます。2社の違いはどこにあるのでしょうか?
年々減少する18歳人口と高まる進学率
業績や事業展開を見る前に、塾業界全体がどのような状態に置かれているのか、俯瞰してみましょう。
日本の18歳人口は、1992年の205万人から減少を続けており、2023年は110万人ほど。およそ30年で半減しました。今後も縮小は続き、2032年には100万人を切ると見られています。
■18歳人口の推計
※文部科学省「地域社会の現状・課題と将来予測の共有について」より
18歳の人口減少は、沖縄県を除くすべての都道府県で起こっている現象です。一部の大都市圏だけで起こっているものではありません。日本という国そのものが抱えている課題です。
しかし、大学の入学者数は増加しています。2006年の大学入学者数は60万人でしたが、2019年は63万人まで増加しました。大学や短大に進学する率は、50%台前半から後半に上がっています。進学率の上昇もすべての都道府県に共通して起こっている現象です。
※文部科学省「地域社会の現状・課題と将来予測の共有について」より
一般家庭が塾や予備校にかける支出額も増加傾向にあります。主に補助学習費に充てられる学校外活動費の年間支出額は、公立高校の子供の家庭で、2021年は20万4,000円。2010年は15万6,000円でした。およそ10年で30.8%も増加しています。
■学習費総額の推移
親が大学に通わせるため、塾や予備校にお金をかけている様子が浮かび上がります。塾を運営する側の視点に立つと、潜在的な生徒の数が減っている代わりに、顧客単価は高まっていることになります。