卵の機能性に注目したパウダーの「UMAMI EGG」
2021年に創業したUMAMI UNITED JAPANは、多様なバックグラウンドを持つ人たちがひとつのテーブルに集って食事ができる「ONE TABLE」を目指したスタートアップ。まず、アレルギーのある人も、動物性食材を食べない人も、同じ食卓を囲めるように、アレルゲンフリーのプラントベースエッグの開発に取り組んだ。カギを握ったのは、日本の食材から生まれた「うま味」だ。
UMAMI UNITED JAPANのUMAMI EGGには3製品。「UMAMI EGGパウダー」(家庭用25g/1500円)、プリンの素「らくぷりんミックス」(家庭用150g/1500円)、卵のフレーバーだけに特化した「UMAMI EGG FLAVOR」(業務用のみ)の3種。いずれもパウダー状。
「UMAMI EGG」のパウダーを豆乳で溶き、オムライスや卵サンドなど卵料理、チャーハンの具材に。
「UMAMI EGG」は自社サイトで販売されているが、主に業務用に開発された製品だ。
「卵は多くの加工食品にとってなくてはならない食材。卵の機能性に着目し、代替できるものをめざしました」と、CEOの山﨑寛斗さんは話す。
レシピ開発を担当するR&Dマネジャーの安藤由佳さんは、「パンやクッキーなどのお菓子はもちろんですが、ふだん私たちが気づかない食品にも卵は入っています。たとえば、とんかつにも衣に卵が入っていますし、一見、卵とは無縁そうなパンは表面を塗り卵でツヤを出します」と、卵のもつ役目の広さを説明。
UMAMI UNITED JAPAN、CEOの山﨑寛斗さんと、R&Dマネジャーの安藤由佳さん。会社ロゴのパーカーで記念撮影した。
「UMAMI EGG」は主原料に、こんにゃく粉やにがりを使用。こんにゃくの弾力性、豆腐の割れる食感などを活かして卵らしさを追求している。こんにゃくは卵のもつ加熱凝固性や保形性、保水性などの機能性も代替している。また、味の面では、きくらげから抽出したうま味成分を酵素で分解して取り入れ、卵のようなコクを表現している。「UMAMI EGG」を使用したパンケーキやスクランブルエッグを試食したところ、卵の黄身の風味がほんのりと感じられた。
「UMAMI EGG」が発売されたのは2022年3月。順調に売り上げを伸ばしてきたが、「昨年末からニーズが変わって来ました」と、山﨑さんは明かす。鶏卵の供給不足が続き、なんとアレルギー対応食品や動物性食材を使わない食品をつくるメーカーからの問い合わせが増加しているという。
「当社の業務用製品は5000グラム約1万円で販売されているが、ケーキなどの製菓に使う場合は少量で済むので、足元の市況をベースにした同社による試算では、費用は2割ほど安くなる」(山﨑CEO)とみる。
現在、UMAMI UNITED JAPANはOEM工場で委託生産し、1日あたり2〜3トンの生産能力を有する。年内にはアメリカでビジネスを展開する予定であり、将来的に国内に自社工場を建てることも検討しているという。
人気の土産菓子が減産に追い込まれたり、レストランのメニューから卵料理が取り下げられたりするニュースが続いている。実は日本は鶏卵消費大国で、一人当たりの年間消費量は2020年で340個。世界2位の多さだ。ちなみに1位はメキシコで380個(出典:鶏鳴新聞社)。これほど卵大好きな国で、2022年来の鳥インフルエンザによる鶏卵の供給回復には、半年から1年かかると言われている。食の多様化に加え、鶏卵の供給不足という情勢は、プラントベースエッグのニーズが変わるきっかけになるかもしれない。
取材・文/佐藤恵菜