お中元にオリジナルビールいかがですか? 需要も掘り起こしも
タンクの設計を担当した技術部長の金輪大地さんは、もともとビール好き。だが、特に製造法に興味を持っていたわけではなかった。「タンクの設計をするにあたり、ビールの原料から調べることになりました」と基礎から勉強。日本語の小型タンク製造マニュアルは門外不出なのかなかなか手に入らず、アメリカのホームブリューイングの手引き書を翻訳しながら参考にしたという。
タンク自体は複雑な設計を要するものではないが、「150リットルという小さいものにすべてを収めることに苦心しました。また、設置場所もとても狭いのです」。
初仕事は、大鵬が大田区池上に今年オープンしたRE.Beerというブルーバー。ブルワリースペースが狭い上に細長い。タンクは造っておしまいではない。ブルワリーに設置し、さらにブルワーが使いやすくなければならない。ブルワーにとって使い勝手が悪ければおいしいビールはできない。
150リットルのタンクはすでに池上の店に搬入され、設置され、あとは稼動を待つばかり。お店の発泡酒免許の取得を待ってファーストバッチとなる。
ちなみに、今回のメイド・イン・大田区タンクの設置は、クラフトワークスのほか、タンクを製造した金属加工工場、店に設置する電気関係の会社などとの連携によって実現した。すべて大田区の工場仲間だ。「ここに強みがあります」と、品質とその管理に、伊藤社長は自信を見せる。
これから実際に稼動し、データを蓄積しながらアップデートにつなげていきたい考えだ。小型であることを活かして顧客を開拓していきたいと話す。「新しいビールの試作に小型タンクは向いています。また。企業向けにはタンク買いもアピールできます。たとえばオリジナルのビールを150リットルつくると、300本ほどのビールができます。企業のお中元、イベントの飲み物やお土産にちょうどいいでしょう」。長い目で、じっくり、事業の柱に育てていきたいと語る。
まちづくりに寄与するクラフトビールブルワリーが増えている。大田区では町工場のポテンシャルを引き出し、国産タンクという新名物を生み出すことにつながった。クラフトビールから次に生まれるのは何だろうか。
取材・文/佐藤恵菜