70年ぶりに行われるイギリス・チャールズ国王の戴冠式。ロンドン市内では記念のケーキが販売されるなど、戴冠式への期待は高まる一方。実際、戴冠式はどのように行われるのか、ジャーナリストの多賀幹子先生に戴冠式の見どころなどについて、教えてもらった。
1000年の歴史を経ても変わらない戴冠式
――多賀先生、6日に行われる戴冠式に注目が集まっていますが、簡単にその歴史を教えてください。
多賀先生 ウエストミンスター寺院で戴冠する君主ですが、およそ千年の歴史があり、チャールズ国王は40番目に戴冠する君主です。
バッキンガム宮殿からの正式発表では、戴冠式は「1000年以上に渡り同様の形式で行われており、今回も核となる要素は変わらない予定」と書かれています。今回の戴冠式については「今日の君主の役割を反映し、未来に目を向けたものになる」とも書かれていて、新しい国王らしさがうかがえる式典になるでしょう。
エリザベス2世のときと同様、チャールズ3世の戴冠式の日も祝日となります。ただし、今回の式は土曜日に行われるため、政府は翌週の月曜、5月8日を振替休日なります。イギリス国民が国を挙げて行う祭典です。
3日かけて開催される関連イベント
――戴冠式ですが、どのように進行されるのでしょうか。
多賀先生 戴冠式は、実際の式典に加えて、セレブレーションが行われます。前日5日にバッキンガム宮殿で国王主催の正式なレセプションが開催されます。
戴冠式の翌日7日には戴冠式ビッグランチと戴冠式コンサートが行われ、多くのミュージシャンが参加します。さらに8日には「The Big Help Out」と呼ばれる全国規模のボランティアイベントも予定されています。
6日の戴冠式当日、チャールズ国王とカミラ王妃は、バッキンガム宮殿から車列を組んでウェストミンスター寺院へ向かうと発表されています。戴冠式はロンドン時間午前11時(日本時間午後7時)からスタートして約一時間半で終了します。
式後は、国王は他のロイヤルメンバーとともに、より大規模な車列でバッキンガム宮殿に戻り、バッキンガム宮殿のバルコニーに揃って登場します。
宝石がちりばめられた重さ2キロの王冠
――テレビ中継もあり、見どころはたくさんありそうですが、戴冠式で使われる王冠について教えてください。
多賀先生 王冠は昨年のエリザベス2世の国葬時、柩の上に載せられていたことでも記憶に残る方も多いでしょう。英国王室の至宝です。王冠に輝く大きなダイヤモンドはカリナン2世(317.4カラット)と呼ばれています。
カリナン2世のついたこの王冠は「聖エドワードクラウン」と呼ばれています。1661年、チャールズ2世のために制作されたもので、中世ウェセックス朝のイングランド王エドワード懺悔王が戴冠式で用いたため、その名が付きました。
カンタベリー大司教からエリザベス2世の頭上へ載せられた、この聖エドワードクラウンの重量は実に2.04kgもあります 。とても重たいものだったので、エリザベス2世は戴冠式の最後に、大英帝国クラウンに変えて被っていらっしゃいました。
カリナン2世は王冠に着けられましたが、カリナン1世はそれよりさらに大きく、長い間、世界最大のカットダイヤモンドでした(今は第2位)。このダイヤモンドは今回の戴冠式でも使われる王笏 (しゃく:Royal Scepter) に飾られています。
カリナンの名前は鉱山の所有者サー・トーマス・カリナンの名前にちなんでいます。1905年に南アフリカのカリナン鉱山で発見された、この史上最大のダイヤモンド原石は、実に3106カラット(621.2グラム)もありました。発見当初、あまりに大きかったので、ダイヤモンドではなく水晶だと勘違いして捨てられた、という逸話も残っています。