相続税の難しさは所得税の比ではない
――いろいろわからなかったのですが、税務署では相続税の相談を受け付けてくれませんでしたよ?
秋山先生 それはある意味、仕方がないことでもあります。私も税務調査官を約40年もやってきましたが、相続税の相談には詳しく対応していなかった。それはなぜかというと、まったく知らない人に、1から10まで教えていたとしたら、税務署はパンクしてしまいます。
そうでなくても、税務署は普段から内部処理に忙しく、職員が四苦八苦している職場です。そこへ時間がかかる相続税相談に来られても、困ってしまいます。
先々月、@DIME読者のみなさんのなかにも所得税の確定申告をされた方がいらっしゃるかもしれません。最近はネットで申告もできるようになり、税務署に来てもらって申告する人は減っているようですが、税務署へ行って、流し込み式で一人一人、処理をされるところもまだあります。所得税は簡単だからできるのです。相続税の相談では1人が終わるのに何日もかかるのですから絶対にできません。
今回、私が本を書いた理由もそこにあって、できれば相続税のことをきちんと知ってもらって、自分で作成できたら良いなと思って上梓しました。でも、正直なところ、本だけ読んですぐに相続税の申告書が作れる人はほとんどいないと思います。そんな簡単なものでは無いからです。ただし、基礎的な知識をもっていることは、実際、相続を体験した時にものすごく役に立つことだと考えています。
所得税や贈与税の申告は、まったく知らない人でも真剣に3日かければ書けないことは無いでしょう。でも、相続税は一か月、懸命に勉強したとしても、完璧に身に付けることはできないでしょう。それほど奥が深く、難しい税なのです。
そして、相続税は何回も経験をすることができません。関係してくるのは、両親が亡くなった時だけなのです。次は自分が亡くなった時だからです。所得税のように一度マスターすれば何度も知識を活かすことができないので、相続専門の税理士しか、申告が難しいのです。
その上、所得税などに比べると、相続税の金額は高いので、知識のあるなしで何百万、いや何千万と違ってくるのです。
土地の相続にも落とし穴が
――相続税の申告も意外と難しくて、土地の広さも「実測に基づいて記入」と書かれています。相続のために測量しなくてはいけませんか?
秋山先生 私自身は相続税のために土地を改めて実測した経験はありません。基本的に固定資産税の支払い証明書などで土地の広さを確認できます。
でも、その不動産を売却した時、200平方メートルで固定資産税は申告して納税しているけれど、実際に売るために測量したら210平方メートルあったという事例が時々あります。もちろん増えたところで修正申告をしなければいけませんが、相続税のために実測することはしません。
――土地の価格も路線価地域と倍率地域があって混乱します。
秋山先生 路線価は国税のサイトを調べると、誰でも見ることができます。路線価地域か倍率地域かは、サイトでわかります。地図に路線価が載っていたら、路線価を選んでいただき、路線価が乗ってなければ倍率表を見てください。
ざっくり言えば、道路が通っている普通の住宅地などは路線価で、田舎の方で、道があまりないような土地などは固定資産税評価額に倍率をかけるやり方で土地の価格を申告できます。