山道では本領発揮、新採用された「正確な位置情報システム」のwhat3 wordsにも注目
かなりタイトなカーブが連続する山道のセクションでは、AWDらしい極めて高い安定性、ハンドリングの自在度、パドルシフトによるスピードコントロール性とともにシートの自然なサポート感が際立ち、今乗っているクルマが最低地上高200mmのクロスオーバーSUVであることを完全に忘れさせてくれるほどの低重心感覚かつファンな操縦感覚を味わせてくれたのだから痛快だった。ブレーキフィールに特筆すべき点はないものの、ブレーキング→加速という一連の流れは、e-BOXER+リニアトロニック(CVT)の連系の良さもあってスムーズそのもの。これでもう少しパワーの余裕があれば、なお良しだろう。ちなみに坂道で一時停止した際は、ディスプレイに勾配角度が表示されるから安心である。
17インチタイヤを履くツーリングのAWDに乗り換えれば、まずは走りの軽快感が印象的だ。パワーユニットはリミテッドと同一だが、タイヤの違いによって乗り味は、いい意味で、段差、うねり路面を問わず、よりしなやかかつおおらかになる。クルマの動きもまたやや穏やかで、ゆったり。誤解してほしくないのは、操縦性がダルになるという意味では決してなく、その感覚もまた気持ちよく、リラックスした運転が可能になるというわけだ。ただし、路面によって車内にこもり音が発生。同じ路面で18インチタイヤでは出なかった症状で、ステアリングの微振動もこちらは気になった。製造初期の個体差なのか、17インチタイヤ装着車の固有の問題なのかは判明していないが、重箱の隅をつつかなければ、ほぼ無視していい症状ではある。
今回、残念ながらクロストレックに新設定されたFFモデルの試乗は叶わなかったが、ロングドライブ、限界性能ではAWDが有利、走りの気持ち良さ、軽快感ではFFに分があるというイメージだろうか。
そうそう、AWDからFFの乗り換えポイントでの目的地設定では、クロストレックに新採用された「正確な位置情報システム」のwhat3 wordsを使ってみた。世界を3m四方ずつに区切り、そこにランダムな3ワードの組み合わせを割り当てるもので、詳細な目的地設定が可能になる。カーナビゲーションの誘導だけでなく、スマートフォンなどで今いる位置を3ワード化して相手に伝えれば、例えば広い駐車場の特定の位置、スタジアム敷地内の特定の待ち合わせポイントを正確に相手に伝えられるのである。それをカーナビゲーションに応用することで、例えば今回の試乗会の基地となった袖ヶ浦フォレストレースウェイの特定の位置を目的地として設定できるのだ。一般的なカーナビゲーションで袖ヶ浦フォレストレースウェイに設定した場合、大まかな敷地のどこかに目的地設定されるのとは大違いの精度というわけだ。
3ワードは、例えば富士山の絶景を望むことのできるある場所を、///たこやき、でんちゅう、ひやけどめ・・・という3ワードで表現するのも面白い。what3 wordsのアプリをダウンロードしている相手に、その3ワードを伝えれば、富士山の絶景を望むことのできるある場所を共有でき、待ち合わせポイントとしても利用できるのである。
ただ、what3 wordsは「正確な位置情報システム」であり、カーナビゲーションでの誘導はナビゲーションシステムに依存することになる(スマホの場合はグーグルマップなどのソフト)。クロストレックのナビゲーションシステム内では、what3 wordsのアイコンをタッチし、ひらがなで3ワードをハイフンで区切り、入力すればOKだ。結果、3m四方ずつに区切られた場所にたどり着くことが可能である。
それにしても、新型クロストレックのシートのかけ心地の良さ、乗り心地の良さ、そしてあらゆる走行シーンでの絶大なる安心感、安定感は、さすがスバル渾身の新型車であると思わずにいられなかった。リミテッドとツーリングの価格差は、装備差から40万円ちょっとになるのだが、どちらを選んでも満足度は極めて高いと思えたのも本当だ(ツーリングでもリミテッド同様の装備が付けられるのも嬉しい)。
スバルの新型クロスオーバーSUV「クロストレック」は「XV」からどう進化したのか?
いよいよ、スバルの新型クロスオーバーSUV、クロストレックの公道試乗の機会が与えられた。実際にタイヤサイズが異なるリミテッド、ツーリングの試乗記をお届けする前に...
文/青山尚暉
写真/スバル・青山尚暉