フラットかつ文句なしに上質で、体に優しく快適な乗り心地
最初に感動したのは、なんとシートのかけ心地だった。医学的、人体構造に基づいた新たなアプローチによる新フロントシートは、分厚いクッション性もさることながら、上半身、腰回りを包み込む自然で心地よいサポート感が絶品。「これなら長時間の着座でも疲れないはず」と、例えばフランス有数のインテリアメーカーであるリーン・ロゼのパーソナルソファのかけ心地を思わせるほどだった。そのやさしくしっかりとしたかけ心地が、本革シートでも得られるところに大きな価値があると思えた。
走り出せば、アクセル踏むとスッと濃厚なトルクがリニアに沸き上がり、ペダルコントロール性に富み、走りやすさは文句なし。レヴォーグにも採用されるデュアルピニオン式アシストを持つパワーステアリングは軽く扱いやすく、マイルドハイブリッドだけにごくスムーズに、静かに加速を開始する。この時点でも「これいいい」と思わず笑みがこぼれるほどだった。
乗り心地もまた、前席のかけ心地同様、感動モノである。オールシーズンの18インチタイヤだから、決してソフトなタッチではないものの、乗り心地は路面の凸凹、うねりに対する足回り、ボディの吸収性能が素晴らしく、フラットかつ文句なしに上質で、体に優しく快適だ。ここにも新型クロストレックの大きな進化のポイントがある。そしてロードノイズの遮断の見事。クロストレックはルーフに高減衰マスチックシーラーを採用し、振動を抑え、静粛性に貢献しているのだが、ボディ、足回りの剛性UPによって、下回りからのノイズも効果的に遮断されている印象である。何しろ、路面を意図的に凸凹させたゼブラゾーンの上を走っても、振動、騒音は最小限。よって、このクラスのクロスオーバーモデルとして例外的に静かに、心地よく走ってくれるというわけだ。
動力性能自体はエンジンのハードをキャリーオーバーしていることもあって、スペックは不変で、とくに速い印象はないものの、水平対向エンジン+モーターによる濃厚なエンジンフィール、ウルトラスムーズな吹け上がりが気持ちいい。それこそ5000回転まで回しても、まったくうるさくなく、むしろ水平対向エンジンならではのビートを伴った快感と思わせるほどのエンジンフィールを示してくれるのである。
ドライブモードはI(インテリジェント)とS(スポーツ)モードの2種だが、燃費重視のIモードでもトルクのツキがよく、アクセルコントロールに対して、ゆったりかつ正確に応えてくれるところが好ましい。だから走りやすいと感じさせてくれるのである。
操縦性はある意味、穏やかだ。ステアリングの切り始めのレスポンスはマイルドで、そこからさらに切り込んでいくと狙ったラインに正確に乗せられるリニアさが顔を出す。軽快感というより落ち着き感ある大人のドライビングフィールというイメージである。
試乗区間の高速道路セクションではアイサイトに含まれるACCの使いやすさが際立った。追従性能、再加速性能の良さは今さら言うまでもないのだが、感心したのは前車との車間距離設定。多くはバー表示だったりして近くなのか、遠くなのかの理解になやむこともあるが、クロストレックのACCの車間距離調整は、前車のリヤとこちらのクルマのアイコンの距離感で調整できるため、実に分かりやすいのである。
そして高速走行時のAWDならではの直進性の良さ、安定感、リラックス感の高さもさることながら、ロードノイズとパーユニットからのノイズの遮断も文句なし。当日は横風が強かったのだが、運転席で聞こえてくるのはそんな横風の音が主体だったほどだった。