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「36協定」って何?管理職なら知っておくべき残業時間の上限と特別条項の規定

2023.05.08

36協定とは、労働基準法第36条に基づく時間外労働・休日労働に関する労使協定です。企業が労働者に残業をさせる場合は、36協定を締結し労働基準監督署に届け出なければなりません。36協定の内容や、残業時間・休日労働の決まりについて詳しく紹介します。

36(サブロク)協定とは?

36協定は、労働基準法第36条の規定に基づく協定です。どのような内容のものなのか、詳細を確認しましょう。

参考:労働基準法 第36条 時間外及び休日の労働 | e-Gov法令検索

時間外・休日労働に関する協定

36協定とは、時間外労働や休日労働に関する労使間の協定です。企業が自社の正社員・パート・アルバイトなどに時間外労働を課す上で、36協定を締結していることが前提となります。

36協定を有効にするためには、企業と『労働者の過半数で組織する労働組合』または『労働者の過半数を代表する者』とが書面で協定を締結し、最寄りの労働基準監督署に届け出る決まりです。

届け出後は、企業が労働者に対して協定の内容について周知しなければなりません。これを怠った場合は労働基準法第106条により30万円以下の罰金が企業に科せられる恐れがあります。

なお36協定の有効期間の定めはありませんが労働基準監督署は1年以内が望ましいとしています。残業がある企業は、毎年協定書を労基署に提出しなければなりません。

参考:労働基準法 第106条 法令等の周知義務 | e-Gov法令検索

働き方改革の影響で現行の形に

働き方改革の推進によって労働環境の整備が進む中、36協定の時間外労働について、罰則付きの上限基準が設けられました。大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から現行の基準が適用されています。

改正前の36協定は、特別な事情がある場合には限度時間を超える残業が認められた上、法的強制力もありませんでした。国は『残業しやすい仕組みが非効率的な長時間労働を生み出している』として、法改正に踏み切ったのです。

新しい36協定の適用により、無制限の残業は不可能となりました。特別な事情があって労使が合意している場合でも、残業の上限を超えることは認められません。違反した企業には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。

参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省

36協定の「時間外労働」「休日労働」とは?

握手する人

(出典) pixta.jp

36協定では、時間外労働と休日労働に関する決まりが定められています。しかしそもそも、36協定における『時間外労働』『休日労働』とは、どのようなものなのでしょうか?

法定労働時間を超えた残業

労働時間とは、始業から終業までの時間から休憩時間を引いた時間です。労働基準法第32条では労働者の労働時間を1日8時間・1週間40時間までと定めており、これが『法定労働時間』となります。

36協定における時間外労働とは、法定労働時間を超えた残業です。すなわち労働者が1日8時間・1週間40時間を超えて働いた場合、超えた時間は『法定時間外労働』となります。企業が残業を依頼するためには、労使間で36協定を締結しておかなければなりません。

参考:労働時間・休日 |厚生労働省
参考:労働基準法 第32条 労働時間 | e-Gov法令検索

法定休日の労働

法定休日とは、労働基準法第35条で定められている労働者の休日です。雇用者は労働者に対し『少なくとも毎週1日の休日または4週間を通じて4日の休日』を与えることが義務付けられています。雇用者が法定休日に労働者を働かせるためには、36協定の締結が必須です。

注意したいのは、週休2日制やフレックス休暇制を採用する会社です。例えば週休2日制の会社で土日のうちの1日だけ出勤した場合、『毎週1日の休日』は確保できています。その会社の休日出勤としてカウントされたとしても、法定休日の労働には該当しません。

ただし労働者が休日に出勤すると、『週40時間』の法定労働時間の上限を超えるケースがあります。この場合は『法定時間外労働』と見なされるため、36協定が必要となります。

参考:労働基準法 第35条 休日 | e-Gov法令検索

法定内残業は36協定の対象外

労働時間には、法律で定められた『法定労働時間』のほか、会社が定める『所定労働時間』があります。会社が所定労働時間を短く設定している場合は、残業しても36協定の対象とならないケースがあります。

例えば労働時間を『午前9時から午後5時まで・休憩1時間』と定めている会社の所定労働時間は、1日7時間です。週に5日・30分ずつ残業をしたとしても、法定労働時間は超えません。

この残業は『所定時間外労働』ではあるものの『法定内残業』です。36協定の『法定時間外労働』の対象外とされ、扱いや割増賃金はそれぞれの会社における基準が適用されます。

参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省

36協定を締結している企業の上限残業時間

パソコン作業

(出典) pixta.jp

労働基準法では、労働時間の上限について厳密に定められています。36協定を結んでいる会社では、どのくらいまで働けるのか、残業時間の上限を確認しましょう。

原則として月45時間・年360時間

労使間で36協定を結んでいる場合、労働時間の上限は月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。上限を超えて残業させた会社には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

また臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働と休日労働の合計は『月100時間未満』『2~6カ月平均80時間以内』に抑えなければならない決まりです。

例えば時間外労働が月43時間だった場合でも、休日労働が58時間あれば、月の上限である100時間を超えます。36協定の限度時間を超えたとして、罰則の対象となります。

参考:時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省

適用の猶予が与えられている事業や業務

業務の特性上または取引の慣行上、時間外労働の上限を設定しにくい事業や業務もあります。以下の事業や業務は、2024年3月いっぱいまでの猶予期間が設けられています。

  • 工作物の建設の事業
  • 自動車運転の業務
  • 医業に従事する医師
  • 鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業

上限規制の適用開始は2024年4月1日からですが、適用範囲は異なります。例えば鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業は、2024年4月1日より上限規定が完全に適用される見込みです。一方その他の事業や業務については、部分的に例外が設けられているほか、適用についてさらなる検討が行われます。

なお新技術・新商品等の研究開発業務については、労働時間の上限規制が適用されません。労働者に一定時間を超えて時間外労働を課す場合は、雇用者が医師による面接指導を受けさせる決まりです。

参考:時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務|厚生労働省

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