3分の1ルールが抱える問題
3分の1ルールはさまざまな問題を抱えており、見直しの方向に向かっています。どんな問題があるのか、具体的に見ていきましょう。
フードロスの原因の一つとされる
フードロスは『食品ロス』とも呼ばれ、本来は食べられるのに廃棄されている食品を指します。農林水産省と環境省の推計によれば、日本で廃棄されている食品の量は、2020年度の時点で522万トンです。
食品ロスを国民1人当たりに換算すると、毎日、茶わん約1杯分が捨てられている計算になります。3分の1ルールによって廃棄された食品だけでなく、家庭で捨てられる食品も含まれた数字です。
2020年度の食品ロス量の内訳を見ると、企業が出す事業系食品ロス量は275万トン、家庭から出る食品ロス量は247万トンとなっており、新鮮な食品を求めて購入しても、食べ切れずに捨ててしまうケースがあることを示しています。
参考:食品ロス量が推計開始以来、最少になりました:農林水産省
廃棄時の費用や環境負荷も発生
3分の1ルールによって廃棄される食品の量が増えると、単にもったいないというだけでなく、廃棄に要する費用や環境負荷も増えます。
食品を作るには、働く人の労力や水・電気などのエネルギーも必要です。食品を捨てるということは、それらも無駄にするということにつながります。ごみを処理する際に多くの二酸化炭素が出て、環境に負荷をかける点も問題です。
食品ロスを含んだ日本の一般ごみの処理費用は、年間で2兆円以上に上ります。この費用は税金で賄われているので、食品ロスが多いほどより多くの税金が投入されることになり、国民の金銭的な負担も大きくなってしまうのです。
3分の1ルールは緩和の方向に
国は食品ロスをなくすための取り組みの一つとして、3分の1ルールを緩和する取り組みを進めています。どのような内容なのか確認しましょう。
農林水産省の取り組みでルール緩和が拡大
農林水産省の主導により、2012年に『食品ロス削減のための商習慣検討ワーキングチーム』が発足しました。食品ロス削減に向けた商慣習の見直しに取り組む事業者の公表が行われ、食品小売業者における納品期限の緩和、食品製造業者における賞味期限表示の大括り化(年月表示、日まとめ表示)が呼びかけられています。
また、2019年7月4日付けで、卸売業者と小売業者の業界団体に宛てて、『食品ロス削減に向けた加工食品の納品期限の更なる見直しについて』を発出しています。こうした取り組みが功を奏し、納品期限の緩和を進める事業者は増加の傾向です。
参考:食品ロス削減に向けた商慣習見直しに取り組む事業者の公表|農林水産省
参考:納品期限の緩和に関する通知|農林水産省
参考:納品期限の緩和を進める事業者が大幅に増加!|農林水産省
構成/編集部