3分の1ルールは食品業界の商習慣で、さまざまな観点から現代社会で問題視されています。このルールが作られた理由や現状について知り、何が問題なのかを理解しましょう。3分の1ルールに対する、国の取り組みも併せて紹介します。
食品業界の3分の1ルールとは何か
食品業界には特有の3分の1ルールがあります。証券やM&Aの世界にも同じ言葉がありますが、食品メーカーやスーパーで使用する際には、意味がまったく異なる点に注意しましょう。食品業界で使用される場合の意味を紹介します。
賞味期限が残り3分の1になる前に納品すること
3分の1ルールは食品メーカー、卸売業者、小売店の間にある商習慣のことで、『食品の納入期限は賞味期限の3分の1以内』とするルールです。賞味期限が3カ月の場合、メーカーや卸業者は製造後1カ月(賞味期限の3分の1)以内に納品することになります。
日本以外の国でもこうした商習慣は存在しますが、アメリカは2分の1ルール、ヨーロッパでは3分の2ルールであり、日本は特に厳しい傾向といえるでしょう。
賞味期限の3分の1を過ぎた商品の行方
実際の賞味期限までかなりの日数があったとしても、3分の1以内で納品できなかったものは、メーカーに返品されます。返品されたものは、同じ値段で再び販売することはできません。
返品後、一部はディスカウントストアなどで販売されたり、フードバンクなどに引き取られたりするケースもありますが、大部分は行き場を失ってしまいます。
引き取り手がなければ、まだ食べられる状態であるにもかかわらず、廃棄になってしまうのです。
なぜ3分の1ルールが導入されたのか
賞味期限にそれほどこだわりがない人の中には、なぜ3分の1ルールが重視されたのか理解できないという人もいるでしょう。3分の1ルールが求められてきた背景や、導入されるようになった理由を紹介します。
消費者のニーズに合わせるため
3分の1ルールは、より新鮮なものを欲しがる消費者に合わせて生まれたルールだとされます。『すぐに食べるかどうか分からないから』『家族が少なく、食べ切るまでに時間がかかるから』などの理由で、少しでも賞味期限が長いものを欲しがる消費者のニーズを受け、より購入してもらいやすくする手段として誕生しました。
賞味期限とは、品質が変わらない状態でおいしく食べられる期限のことで、消費期限とは違い、期限が過ぎたからといって食べられなくなるわけではありません。
一度、封を切ったものは、傷みが早くなるのですぐに食べ切る必要がありますが、袋や容器を開けずに保存していたなら、賞味期限が近かったとしても問題なく食べられる可能性は高いでしょう。
賞味期限切れによるクレームを避けるため
食品を購入する際、賞味期限をチェックする人は少なくありません。賞味期限が切れたものを店頭に並べておくと消費者からクレームがきてしまうので、小売店は早めに撤去したいと考えます。
『あの店は新鮮なものを置いていない』という悪い評判が立てば、利用者が減り経営が厳しくなってしまうでしょう。
賞味期限が過ぎるまで置くのではなく、期限より早めに売り場から下げる工夫をしている小売店もあります。賞味期限が近いものは、消費者に販売しないようにしている店舗もあるのです。