燃料費調整額の上限撤廃を実施した中部電力
東京電力の電力小売事業者である東京電力エナジーパートナーは、2022年4-12月の売上高が前年同期間の1.5倍となる4兆4,667億円に跳ね上がりましたが、4,000億円近い大赤字を出しています。前年同期間は423億円の赤字でした。東京電力は巨額の赤字の主要因に燃料価格高騰の影響で電気調達費用が増加したことを挙げています。
※東京電力「決算説明資料」より
中部電力のミライズは2023年3月期に100億円程度の経常利益を見込んでいます。前年度の差額(プラス効果)は930億円にも上ります。
ミライズは2022年11月(12月の電気料金)から燃料費調整額の上限を廃止しました。燃料費調整額とは、燃料の調達価格高騰で契約者の負担が重くなりすぎないよう配慮した制度。調達価格を電気代にすべて反映するのではなく、上限を設けて超過分を電力会社が負担するというものです。中部電力はその上限を撤廃しました。
中部電力はミライズの収益改善の主要因の一つが、販売価格の見直しだとしています。
価格交渉の過程では値上げに納得した顧客がいた一方で、安い電力会社に切り替えた顧客がいたことも明言。しかし、調達価格が販売価格を上回る逆ザヤ状態が改善し、赤字の圧縮が進みました。
ミライズは市場動向を見極め、2022年3月期から早期の販売価格対策を行っていました。
電力を大量に消費する大口顧客を中心に、価格を抑えて提供していたのでしょう。燃料費調整額の上限によって供給すればするだけ赤字が拡大する状態が続いていました。中部電力はエネルギー価格高騰を背景として、その状態からの転換を図りました。逆風下で健全な経営へと一歩足を進めたことになります。
ミライズは2025年度に200~300億円程度の利益を見込んでいます。エネルギー高はそれを推し進めるきっかけの一つとなりました。
取材・文/不破 聡