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水耕栽培と魚の養殖を掛け合わせた循環型農業「アクアポニックス」が注目されている理由

2023.04.27

サンシャイン水族館も実証実験中。5月にも展示

東京池袋のサンシャイン水族館では2年ほど前からアクアポニックスを研究してきた。きっかけは、「爬虫類のエサを自給自足したくて」と企画担当の山辺英生さんは明かす。サンシャイン水族館にはトカゲなど爬虫類も展示されている。えさには葉物野菜も使う。大事な爬虫類たちには、できれば無農薬の有機野菜を食べさせたい。が、コストが高くつく……と、そこで巡り合ったのがアクアポニックスだ。魚を育てながら無農薬・無化学肥料の葉物野菜が大量に収穫できる。

ちょうどそのころ観光資源としてアクアポニックスの導入を検討しているグループがあった。東京都青梅市の一般社団法人Iwakura Experienceという。Iwakura Experienceには農業のノウハウがあり、サンシャイン水族館には水槽や飼育のノウハウがある。お互いの知見を交換しながらアクアポニックスの技術確立につなげようと、共同プロジェクト「アクアリウムファーム東京」を開始した。

サンシャイン水族館の事務所内に設置された実験用の水槽。5月に展示開始の予定。

アクアポニックスを一般の水族館で展示する意義は大きい。「生態系を支える大きな役割を果たしているのが微生物。しかし微生物ゆえ私たちは見ることができません。アクアポニックスを通して、水の循環や生態系の循環、生き物と植物のつながり、そのつながりになくてはならない微生物の存在に触れる機会をつくりたい」前出・山辺さん)と、環境教育の場としての有効性を語る。

一方、提携先の(一社)Iwakura Experienceは観光資源の柱としてアクアポニックスを導入した。青梅の岩倉温泉に一軒残る旅館「儘多屋」の敷地内にハウスを建てた。現在、水槽ではパンガシウスというナマズ目、鯉、レッドフックメチニスという南米の魚を養殖している。

(一社)Iwakura Experienceの代表本橋大輔さんと、温泉旅館「儘田屋」の6代目、儘田菜つ美さん。(一社)Iwakura Experienceは青梅市の歴史と文化を次世代につなげたいと青梅大好きな有志が結成。白いタワーの内側を24時間、水が通っている。

代表の本橋大輔さんは「魚は環境の変化に強いものを選んでいます。野菜はいろいろな種類を試しているところですが、バジルや春菊は相性がいいようですね。土栽培の野菜と比べると、茎がやわらかく、春菊もそのまま食べてもおいしいです。レッドフックメチニスはエサにレタスを食べるので、ここで獲れたレタスをそのままあげることができますよ」と、魚と野菜の相性を実証実験中である。

葉ニンジン、イタリアンパセリ、ルッコラ、リーフレタス、春菊、パクチーなどなど、いろんな葉物が収穫できる!

すでに一般に向けた収穫体験を実施している。子ども連れのファミリー層の来訪を見込む。緑豊かなハウスのすぐ隣には土の畑があり、池がある。「魚と植物の間の循環が見られるだけでなく、土耕農法で獲れた野菜との違いが目の当たりにできるともっといいですね」と、畑での栽培も始める予定だ。

このようにアクアポニックスはエコな循環型農業として、遊休地の活用や観光資源として有力な新事業の選択肢になっている。消費者にとっては生態系の営みを感じられる、有機の食材だ。アクアポニックス産の野菜や魚がスーパーに並ぶ日はいつだろうか。

取材・文/佐藤恵菜

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