急激な燃料高を受け、大手電力10社の2022年度第3四半期(2022年4~12月)決算は、うち9社が最終赤字を計上した。
ロシアのウクライナ侵攻や円安によるエネルギー価格の高騰を背景に大手各社が家庭向け電力の値上げ方針を掲げ、それに伴い電力小売業者(新電力会社)でも値上げの動きがある。
帝国データバンクの2022年12月調査では、電気料金の総額が1年前と比較して増加した企業は86.6%にのぼった。
一方、新電力会社の倒産や撤退で契約継続が困難となり、無契約状態となったため大手電力会社等から供給を受ける「電力難民」企業は2022年10月には4万5871件に急増。
2023年3月は3万7873件まで減少したが依然として高水準となっている(電力・ガス取引監視等委員会3月15日公表)。新電力会社は財務基盤が脆弱ななか、契約停止や撤退する企業が相次いで発生している。
そんな中、帝国データバンクはこのほど、2021年4月までに登録にあった新電力706社における、事業動向について調査を行い、その結果を発表した。
契約停止・撤退等195社、1年で6.3倍に急増
電力の市場価格高騰が長引き、撤退などに踏み切る新電力会社が増加している。2021年4月までに登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)706社のうち、2023年3月24日時点で195社(構成比27.6%)が倒産や廃業、または電力事業の契約停止や撤退などを行ったことがわかった。
2022年3月末時点では累計31社だったが、同年6月には累計104社に急増、同年11月28日時点で累計146社まで増加し、今回2022年3月末から1年で6.3倍に急増した。
195社の態様を分類すると、最も多いのは、新規申し込み停止を含めた「契約停止」の112社(構成比57.4%)で、2022年11月時点の91社から21社増加した。また、電力販売事業からの「撤退」は57社で、同年11月時点(33社)から大幅増。
「倒産・廃業」は26社で、東北電力と東京瓦斯の共同出資で設立された(株)シナジアパワー(東京、2022年12月破産、負債130億円)や、日本電灯電力販売(株)(東京、2023年1月破産、負債5000万円)などの倒産が発生した。
各社が約款改訂や料金プラン変更を行うなか、2023年1月から政府の電気料金緩和対策による料金値引きも行われており、わずかだが新規受付を再開する業者も見られる。
しかし、2020年末以降の断続的な卸電力市場の価格高騰の影響は色濃く、従来のビジネスモデルの継続が難しくなっており財務基盤が脆弱な事業者が契約停止から撤退、大手資本の出資があっても撤退後に倒産に転じるケースも出てきた。