実店舗を持たず、インターネットを介した取引で金融サービスを提供する「ネット銀行(新形態の銀行)」の利用が個人および企業の間で年々拡大している。
帝国データバンクが発表した「2022年全国企業『メインバンク』動向調査」 によると、全国企業のメインバンクについて、都市銀行は減少傾向である一方、ネット銀行は他業態に比べて大幅なシェア拡大を継続。
インターネットバンキングの普及が加速しているなか、ネット上での取引が可能、かつ手数料や利用料が比較的低いことなどがその背景にあげられる。
そこで帝国データバンクはこのほど、ネット銀行との取引に関する企業の動向について調査を実施し、その結果を発表した。本調査は、TDB景気動向調査2023年2月調査とともに行われている。
企業の28.0%がネット銀行を利用、新型コロナ禍を機に取引再開/開始は2%にとどまる
ネット銀行との取引について尋ねたところ、『取引している』と回答した企業は28.0%となった。その内訳をみると「新型コロナ禍の前から取引している」企業は26.0%、「過去に取引をしていたが、改めて再開した」は0.4%、「新たに取引を始めた」は1.6%となった。合計すると企業の2%が新型コロナ禍を機にネット銀行を再開または開始した。
企業からは、「新型コロナ禍とは関係なく、ネット銀行取引は、振込手数料がかからないため取引を決めた」(一般電気工事、岩手県)といった声が聞かれた。
一方で、「取引していない」は61.5%となり、「分からない」は10.5%だった。取引していない企業からは、「メガバンクのインターネットバンキング利用機会は増えており、ネット銀行との取引は今のところ利用するつもりはない」(酒類卸売、東京都)といった声があがっていた。
企業規模が小さいほどネット銀行との取引割合が高い
ネット銀行と取引している企業の割合を規模別にみると、「大企業」は22.8%と全体を5.2ポイント下回った。一方で、「中小企業」は29.0%、とりわけ「小規模企業」は30.6%と全体より2.6ポイント高くなった。
従業員数別でみても、「1,000人超」(18.6%)および「301~1,000人」(19.0%)は2割未満だった一方、「5人以下」(32.2%)、「6~20人」(30.3%)は3割超となっている。規模が小さい企業ほどネット銀行との取引の割合が高まっていた。
特に小売業界で約4割の企業がネット銀行利用
ネット銀行と取引している企業の割合を業界別にみると、『小売』は39.8%で最大となり、全体を11.8ポイント上回った。以下、『不動産』(33.8%)、『サービス』(31.4%)、『農・林・水産』(30.6%)が3割台前半で続いた。
さらに主な業種でみると、「医薬品・日用雑貨品小売」(42.3%)、「飲食店」(40.7%)では4割超の企業がネット銀行と取引している。
また、「人材派遣・紹介」(38.5%)やガソリンスタンドを含む「専門商品小売」(38.0%)、総合スーパーを含む「各種商品小売」(36.0%)などは3割台後半となり、とりわけ個人消費関連の業種で『取引している』割合が高い傾向となっている。
キャッシュレス化の進展にともない、スマホ決済を導入する小売店や飲食店などが増加しているなか、スマホ決済サービスと連携しているネット銀行を利用すると売上金振り込みに関する優遇が受けられるといった利点が、個人消費関連の業種におけるネット銀行との取引を促す一因だと考えられる。
企業からは、「ネット銀行は振込手数料が安いため、利用している。また、実店舗を持っている銀行口座と併用しているが、そうした銀行のインターネットバンキングよりもネット銀行のほうがセキュリティー面がしっかりしていると感じる」(各種商品通信販売、青森県)や「キャッシュレス化にともない、QRコード決済を導入したが、手数料が安くなるため連携しているネット銀行の口座を売上金の受取口座として使っている。またネット銀行は基本的に都市銀行より振込手数料が安い」(一般飲食店、香川県)といったコメントが聞かれた。