3. 婚姻費用算定表について
離婚時に精算すべき婚姻費用の金額を簡易的に求めるには、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を利用するのが便利です。
婚姻費用算定表は、子どもの有無・人数・年齢に応じた10種類の表(表10~表19)から成り立っています。夫婦双方の年収を縦軸と横軸に当てはめると、大まかな婚姻費用の金額を求めることができます。
(例)
・子ども(10歳)が1人いる夫婦が離婚する
・夫の年収は500万円(給与)
・妻の年収は400万円(給与)
・別居期間中に子どもと同居していたのは妻
→「(表11)婚姻費用・子1人表(子0~14歳)」を用います。
縦軸(義務者)を給与所得500万円、横軸(権利者)を給与所得400万円として交差点を確認すると、「4~6万円」の半ばあたりです。
したがって、夫が妻に支払うべき婚姻費用は、月5万円前後であることがわかります。
参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所
4. 婚姻費用の詳しい計算方法
1円単位で正確に婚姻費用を計算したい場合は、以下の手順で計算します。
①義務者と権利者の基礎収入を求める
②権利者世帯が得るべき婚姻費用額を計算する
③権利者の基礎収入との差額を精算する
4-1. 義務者と権利者の基礎収入を求める
「基礎収入」とは、総収入から婚姻費用に充てるべきでない金額(公租公課・就労のための費用・住居関係費など)を控除したものです。
基礎収入=義務者の総収入×基礎収入割合
<給与所得者>
総収入額 (=源泉徴収票の支払金額) |
基礎収入割合 |
0~75万円 |
54% |
~100万円 |
50% |
~125万円 |
46% |
~175万円 |
44% |
~275万円 |
43% |
~525万円 |
42% |
~725万円 |
41% |
~1,325万円 |
40% |
~1,475万円 |
39% |
~2,000万円 |
38% |
<自営業者>
総収入額 (=確定申告時の課税所得金額) |
基礎収入割合 |
0~66万円 |
61% |
~82万円 |
60% |
~98万円 |
59% |
~256万円 |
58% |
~349万円 |
57% |
~392万円 |
56% |
~496万円 |
55% |
~563万円 |
54% |
~784万円 |
53% |
~942万円 |
52% |
~1,046万円 |
51% |
~1,179万円 |
50% |
~1,482万円 |
49% |
~1,567万円 |
48% |
(例)
・子ども(10歳)が1人いる夫婦が離婚する
・夫の年収は500万円(給与)
・妻の年収は400万円(給与)
・別居期間中に子どもと同居していたのは妻
→義務者(夫)の基礎収入は210万円(=500万円×42%)、権利者(妻)の基礎収入は168万円(=400万円×42%)
4-2. 権利者世帯が得るべき婚姻費用額を計算する
権利者(受け取る側)の世帯が得るべき婚姻費用額を、以下の式によって計算します。
権利者世帯が得るべき婚姻費用額
=(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)
×権利者世帯に属する人の生活費指数の合計
÷権利者世帯と義務者世帯に属する人の生活費指数の合計
※生活費指数
夫婦本人:それぞれ100
子ども(14歳以下):1人当たり62
子ども(15歳以上):1人当たり85
(例)
・子ども(10歳)が1人いる夫婦が離婚する
・夫の年収は500万円(給与)※基礎収入は210万円
・妻の年収は400万円(給与)※基礎収入は168万円
・別居期間中に子どもと同居していたのは妻
→権利者世帯は妻・子、義務者世帯は夫
権利者世帯が得るべき婚姻費用額
=(210万円+168万円)×162÷262
=233万7252円
4-3. 権利者の基礎収入との差額を精算する
最後に、権利者世帯が得るべき婚姻費用額と、権利者の基礎収入の差額を計算します。この計算結果は、義務者が権利者に支払うべき婚姻費用の年額です。
上記の例では、
権利者が得るべき婚姻費用額-権利者の基礎収入
=233万7252円-168万円
=65万7252円(年額)
月額:5万4771円
となります。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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