江ノ島電鉄は4月15日からクレジットカードのタッチ決済に対応する。
ここ数年で日本でも急速に普及しているクレカのタッチ決済。従来のように端末内に挿入せずとも、認識パッドにかざすだけで支払いを完了することができる「非接触型決済」は、何も交通系ICカードの専売特許というわけではない。
むしろ海外ではパンデミック以前から「タッチ決済のできるクレカ」が当たり前のものとなっていた。
それ故に、日本と海外との間で「ズレ」が生じている。江ノ電にタッチ決済が導入されたのは、そのような「ズレ」を是正するためと言ってもいいだろう。
首都圏の鉄道では初の試み
4月14日、江ノ電江ノ島駅。
この駅は江ノ電本社に接続され、建物からそのままプラットフォームへ行くことができる構造だ。そしてこの日の江ノ島駅も、外国人観光客の姿が数多くあった。
容赦ない国境閉鎖をもたらしたパンデミックは、もはや終息しかかっているのだ。
2020年以前は「インバウンド需要」ということがよく叫ばれていた。それは3年間の冷凍睡眠を経て、ようやく再始動しようとしている。そして江ノ電のタッチ決済導入は、実は首都圏の鉄道では初めての試みだ。
我々日本人には馴染み深い交通系ICカードのNFC規格はType-F即ちFeliCaだが、これは国際的にはマイナーな規格でもある。
クレカを含めた世界主流の規格はNFC Type A/Bと呼ばれるもの。つまり、外国人観光客が日本の鉄道を利用しようと思ったら、券売機で切符を購入するか交通系ICカードを入手するしかないというわけだ。
自国で使っているクレカを、そのまま駅の改札で利用できないものか。
仮に日本の鉄道をクレカのタッチ決済で利用できるとしたら、そこに現れるのは「決済手段の一元化」である。
タッチ決済専用の「ポール型改札機」
15日から江ノ電全駅で対応するクレカのブランドは、Visa、JCB、American Express、Diners Club、Discover。MasterCardと銀聯は後ほど対応予定という。
それにしても、なぜ江ノ電は首都圏にある他の鉄道事業者に先駆けてタッチ決済の導入を決断したのだろうか?
江ノ電は併用軌道即ち道路上に線路が通っている。これは観光客から見れば情緒のひとつではあるが、それ故の渋滞や事故が発生しやすい。さらに、江ノ電は観光路線というわけでは決してなく、地元住民や学生も毎日利用している。
そのような鉄道では、極力迅速に利用者を構内へ入れ、そして出す必要がある。「人の流れを止めてはいけない」ということだ。
此度のタッチ決済導入で新たに設置されたポール型改札機は、極めてシンプルな造りの機器である。日本を初めて訪れる外国人観光客でも直感的に利用できるだろう、ということが分かるほど。
外国語の案内表示をどうするか、という問題はあるだろう。が、それは利用者が増えれば自ずと解決する点でもある。いずれにせよ、外国人観光客は「同じクレカで全ての決済ができる」という要素を強く望んでいる。