ビジネスシーンにおいて、自分のアイデアやイメージを相手に上手く伝えられれば、その後の仕事がスムーズに進む。その手段として用いられるのが「ポンチ絵」だ。この言葉を初めて聞く人もいるかもしれないが、日々の仕事の中で当たり前のように使われている業界もある。
そこで本記事では、ポンチ絵の意味や使い方を詳しく解説していく。ポンチ絵への理解を深めて活用できれば、仕事の効率アップにも繋がるため、この機会にぜひ覚えておこう。
ビジネス用語の「ポンチ絵」とは?
はじめに、「ポンチ絵」が持つ2つの意味を紹介する。併せて紹介する「ポンチ絵」の「ポンチ」の由来についてもチェックしておこう。
概略図や構想図のこと
「ポンチ絵」は、幕末から明治にかけて流行した西洋の風刺画や世相漫画、また、これらの作品に影響を受けて日本の浮世絵師たちが描き始めた風刺画の総称として使われていた。
現代のビジネスシーンで使われる「ポンチ絵」は、大まかに描いた概略図や正式ではない構成図を指す。また、製図のために作成する下書きや、イラスト・図を使って概要をまとめた企画書なども「ポンチ絵」と呼ばれる。
「ポンチ絵」の「ポンチ」とは?
「ポンチ」の語源については、イギリスで発行されていた風刺漫画雑誌「パンチ」であるとする説と、イギリス人のワーグマンが発行した漫画雑誌「ジャパン‐パンチ」とする説の2つが存在する。いずれにしても「パンチ(punch)」という英語を日本人が「ポンチ」と解釈したことが由来といえる。
「ポンチ絵」の使い方
次に、ポンチ絵の使用シーンと例文を説明する。ぜひ具体的なシチュエーションを思い浮かべながら読み進めてほしい。
使用シーン
先ほど紹介した通り、ポンチ絵は大まかな概略図や構図のことを指す。例えば、製品開発中の際に工場や企画部にイメージを伝えたり、打ち合わせ中に相手が求めている機能を整理したりする場面で使える。
例文
ポンチ絵の使い方をイメージできるよう、ここからは例文をいくつか紹介しよう。
【例文】
「構造がちょっと複雑だから、ポンチ絵を使って説明した方がわかりやすいかもしれないね」
「今度の打ち合わせをスムーズに進めたいから、企画についてポンチ絵を描いておいてもらってもいいかな?」
「新商品のプレゼン資料ですが、ポンチ絵を使って製品の特長を分かりやすく説明するのはどうでしょうか」
「ポンチ絵」の類義語
「ポンチ絵」以外にも、わかりやすくまとめられた概略図や、正式な書面となる前の下書きを指して使われる表現はいくつも存在する。ここでは例として4つの関連用語を紹介しよう。
・ラフスケッチ
ラフスケッチも、ポンチ絵と同様に簡単に描かれた概略図や下絵のことを表す。建築やアート、デザインの分野で使われることが多い。
・ドラフト
ビジネス用語として使われる「ドラフト」には、「下書き」や「草稿」といった意味がある。主に契約書や仕様書などを作成する場面で用いられる。
・ワイヤーフレーム
WEBサイトを作成する前に作成される、WEBページの設計図のことを指す。WEB制作業界で頻繁に使われる用語だ。
・インフォグラフィックス
複雑な情報やデータを視覚的にわかりやすく、シンプルにまとめた図のこと。資料や広告の中にインフォグラフィックスが挿入されることも多い。
業界ごとに異なる「ポンチ絵」の形
「ポンチ絵」は、業界によって微妙に定義が異なる場合がある。最後に、ポンチ絵がよく使われる省庁・役所やIT業界、土木業界の3つの業界を例に、それぞれの業界における「ポンチ絵」の意味を紹介しよう。
省庁・役所
省庁や地域の役所では、審議会に提出するために事業や政策について1枚のスライドにまとめた概略図を作成することがあり、この図のことを「ポンチ絵」と呼ぶ。
IT業界
IT業界では、これから開発する製品のイメージを相手に伝えるために、設計図の前段階として手書きで作成された概略図を指す。文章だけではなく、視覚的に製品の内容を伝えられるため、製品開発の効率が向上するのが作成のメリットだ。
土木業界
土木業界では、CADで描く詳細な図面ではなく、フリーハンドで簡単に描いた概念図をポンチ絵と呼ぶ。例えば、工区全体の概要を説明したいときは重要ではない箇所を省いて説明する。ポンチ絵を使用すれば、重要な部分に焦点を当ててわかりやすく全体のイメージを伝えられるため、相手との認識の食い違いが起きにくくなる。
文/編集部