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地裁と高裁の判決が真逆!?退職を申し出た社員に会社が損害賠償請求、裁判官ガチャの結果に驚愕

2023.04.23

どんなバトル?

▼ 会社の言い分

訴訟を提起したのは会社です。会社の言い分はザックリ「この2ヶ月間、Xさんは全然仕事してないから損害が発生した。損害を賠償して下さい」というもの。

会社
「1/14に入社してから3/19までの間、担当業務をほとんど遂行していなかったんですよ」

――― 裁判官、どうですか?

裁判官
「してますね。会社の主張は結局のところ『Xさんの仕事内容や仕事の進捗状況が期待するものではなかった』というのにとどまります」

会社
「3/20から退職日の3/31に至ってはまったく仕事をしてませんよ」

裁判官
「たしかに仕事してないけどXさんの責任じゃない(カタイ言葉でいうとXさんに帰責事由なし)。だってうつ病が悪化した原因は長時間の残業のせいなんだから。深夜労働もあったしさ」

あと、高裁の裁判官は怒ってますね。

高裁の裁判官
「会社は「Xさんは精神疾患にかかっていない」と主張し続けてますけど、Xさんがうつ病にかかってることは裁判に出てきた証拠から明らかじゃん。精神疾患を持つ患者に対する理解や配慮が欠けているよ」

裁判での【姿勢】も裁判官の心証に影響しますね。裁判所では常識をわきまえた対応を心がけるように!(短パンで法廷に行ってたオマエが言うな)

というわけで会社の主張は撃沈しました。

▼ Xさんの言い分

Xさんは反撃に出ます(反訴ってやつです)

Xさんの言い分はザックリ「労働者には退職の自由があるのに社長から『3末で辞めるのは無理だ、後任者が見つかる前に辞めたら損害賠償請求する』などと言われ、誓約書へのサインを強要された。安全配慮義務違反だから慰謝料100万円を払ってください」というもの。

――― 裁判官さん、Xさんの言うとおりコレはやりすぎじゃないですか!?

地裁の裁判官
「違法とは言えない。理由は以下のとおり」

・3/14に「3末で辞めたい」との申し出は唐突
・はじめは他社で働くことを理由に挙げていたのにその後うつ病だと告げており、社長が疑ったとしてもやむを得ない」
・サインを求める際に暴行、脅迫を用いた証拠はない

――― マジですか…。高裁の裁判官さんは、どうですか?

高裁の裁判官
「違法だ。社長のとった措置は安全配慮義務に違反している。5万円払え。理由は以下のとおり」

〈理由〉
・この誓約書は理由のいかんを問わず後任者が採用されるまでは退職できず、違反した場合には無条件で多額の損害賠償請求を受けることを認める内容と読める
・長時間の押し問答中、社長に押し切られる形でサインした。
・社長が「うつ病はウソなのでは..」.と疑ったなら診断書をもらうなどして慎重に確認すべきだ。それでもしうつ病にかかっていたことが確認できたなら病状を悪化させないように退職時期に配慮するなどの対応をすべき安全配慮義務を負っている。なのにこの社長といったら、そんな手続きを踏むこともなく、業務を続けるよう執拗に要請し、しかも脅迫と受けとられても仕方がない発言に及んでXさんの意思決定を拘束した。

――― Xさん、脅迫と受けとられても仕方がない発言って、社長からどんなことを言われたんですか?

Xさん
「福岡で仕事ができないようにしてやる」「天神を歩けないようにしてやる」と言われました

――― まるでヤクザですね。裁判官、この発言についてはどうですか?

地裁の裁判官
「Xさんの供述には勤務状況などを誇張する傾向が伺われる上に〜(色々と理由を述べて)Xさんの供述を採用できない」

――― Xさんのこと信用してない感じですね。高裁の裁判官はいかがですか?

高裁の裁判官
「根も葉もないXさんの作り話と断定する根拠は乏しい」
「社長が感情の赴くままに上記発言をしたとしてもあながち不自然とは言えない」
「なので上記発言をしたと推認できる」

真逆!

★これはもう裁判官ガチャです。今回はXさんに有利な認定となりましたが、どうなるか分かりません。だって裁判官が逆だったらXさん負けてるし。なのでモメるときの合いのときは常時録音をオススメします。録音があれば1発で勝負が決まります。

ほかの裁判例

鼻息のあらい会社は「オメーのせいで損害が出たから損害賠償請求だ!」と拳を振り上げてくることがあるんですが、なかなか認められません。

コチラの裁判例もご覧ください

うつ病で辞めた元社員に会社が「1270万払え!」と報復訴訟、裁判所が下した結論は?

こんにちは。 弁護士の林 孝匡です。 宇宙イチ分かりやすい解説を目指しています。 今回は裁判例のザックリ解説です。 社員さんがうつ病になって会社を辞めたんです。...

▼ 相談するところ

もし会社から「この誓約書にサインしろ」とオラつかれてる方がいればサインする前に労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。

労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。

今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや!」があれば、下記URLからポストお願いします。
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