政府は2022年を“スタートアップ創出元年”と銘打ち、以降「骨太の方針」や「総合経済政策」においてスタートアップに対する投資拡大の施策を示し続け、同年末には「スタートアップ育成5か年計画」を発表。
そのなかで、今後5年間でその数を10倍に増やすなどの目標を設定した。
世界主要国と比較して時価総額1,000億円超の未上場企業「ユニコーン」の社数は低位にあると言われるなか、日本経済の起爆剤としてスタートアップ企業の活躍が大きく期待されている。
そんな中、帝国データバンクはこのほど、「東京23区のスタートアップ企業に関する動向調査」を実施し、その結果を公開した。
渋谷区は個人向けサービス、千代田区はテック系、中央区はヘルスケア…など特色はさまざま
東京23区内における設立10年以内のスタートアップ企業数2,549社について内訳をみると、「港区」が22.6%で最も高く、幅広い業種が顔を並べている。
次いで“若者の街”として賑わう「渋谷区」(22.1%)が続き、EC、エンタメ、ファッションなど個人向けサービスを展開している企業が多い。
さらに、大手町・丸の内エリアが代表的な「千代田区」(14.8%)ではDX、FinTechなどのテック系企業、大手製薬会社の本社が集う「中央区」(11.2%)ではヘルスケア系企業の集積が目立ち、各地域でさまざまな特色が表れている。
設立8年目が、スタートアップ拡大・縮小の分岐点に
スタートアップ企業の資本金を設立年別にみると設立10年目の企業(2013年設立)は、平均約3億550万円と最も高くなっている。一方、設立3年目以降の推移を見ると、設立8年目(2015年設立)は、平均約1億4,330万円となった。
比較的資金調達がしやすい新株発行など「エクイティファイナンス」で得た資金を、事業に行き詰まり、経営スリム化・立て直しの一環として、減資によって負債を縮小させ、バランスシートの改善を多く行われる時期と想定され、設立8年目がスタートアップ経営の拡大と縮小の分岐点とされる時期とも言えよう。
多くのスタートアップが間接金融の融資を受け始めるのは、設立2年目から
従来、スタートアップ企業にとって「デットファイナンス」の代表格である金融機関からの融資を受けるハードルは高かったが、近年は金融庁を中心に「事業成長担保権(仮称)」の創設を図る動きがみられるなど、特にスタートアップ企業に対する融資は今後の拡大が期待されている。
スタートアップ企業の平均自己資本比率をみると、設立1年目では92.0%と高位にある。金融機関からの融資など、負債にあたる「デットファイナンス」による資金調達ができているスタートアップ企業は少ない。
一方、設立2年目以降から平均は70%を下回り、金融機関など間接金融による融資の割合が大きくなるなかで、自己資本比率が下がる傾向が明らかになった。