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大赤字から脱却できないHISと早々に黒字化を達成したJTBの違いはどこにあるのか?

2023.04.19

エイチ・アイ・エスが赤字から抜け出せません。2023年10月期第1四半期は35億7,100万円の純損失を計上しました。前年同期間の92億9,900万円から赤字幅は縮小しているものの、黒字化の見通しがたちません。

一方、JTBは2022年3月期に284億6,100万円の最終利益を出しています。早期黒字化を果たしていました。2社の違いはどこにあるのでしょうか?

売上高がコロナ前の2割にも届かないエイチ・アイ・エス

JTBは2023年3月期の売上高を前期比74.3%増の1兆150億円、63億円の営業利益を予想しています。予想通りに着地をすると、売上高はコロナ禍が深刻化する直前の2020年3月期の8割程度まで回復する見込みです。

決算概要より

2023年3月期の営業利益率は0.6%となり、2019年3月期の実績値を上回る予想を出しています。

JTBは2021年3月期に1,000億円を超える純損失を計上。天王洲アイルにある本社を含むビル2棟を300億円程度で売却し、ボーナスの支給をストップするなど、一時は瀕死とも言える状況に追い込まれました。

しかし、1,000億円近い営業損失をわずか1年で50億円まで圧縮。その後、最終利益を出すまでになりました。

泥沼から抜け出せないのがエイチ・アイ・エス。2022年10月期の売上高は1,427億9,400万円で前期比20.4%増となったものの、2019年10月期の売上高の2割にも届いていません。

決算短信より

通期で3桁億円台の営業損失を3期連続で出しています。

国内旅行は早々と回復、海外は道半ば

エイチ・アイ・エスも本社ビルを325億円で売却。虎の子ハウステンボスも1,000億円で売り払うことを決定しました。646億6,000万円もの譲渡益(個別決算)を2022年10月期に計上しましたが、最終益を出すことはできず、95億4,700万円の純損失を出しています。

エイチ・アイ・エスの自己資本比率は2023年1月末の段階で11.0%。本社ビルや再生したテーマパークを売却しても経営危機とも言える状態から脱することができません。

2社にこれだけの差が生じた主要因が、国内旅行と海外旅行の取扱額の違い。JTBは国内旅行のシェアが4割を超える業界トップで、エイチ・アイ・エスは2%にも満たない程度でした。

日本交通公社「旅行年報」より

観光庁によると、2022年の国内旅行の消費額は17兆2,000億円。この数字は2019年のおよそ8割に該当します。完全回復とはいかないまでも、需要は急速に戻っていることがわかります。

観光庁「旅行・観光消費動向調査」より

コロナ前のJTBは海外旅行よりも国内旅行の取扱額が多く、国内旅行は1兆円近く扱っていました。海外旅行はその半分程度です。

JTBは2023年3月期の売上高を2020年3月期の8割程度と予想していますが、これは国内旅行の市況が回復し、その波に乗れたからに他なりません。

戻りが遅いのが、海外旅行。コロナ禍で海外にまで足を運ぶ機運が失われていることに加え、アメリカとヨーロッパを中心として急速な物価高、それに輪をかけて発生している円安の影響で日本人が海外に出づらい環境へと陥りました。

2022年の出国日本人数は277万人で、2019年の1割程度しかいません。

観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」より

海外旅行への依存度を高めていたエイチ・アイ・エスは中期的な苦戦が予想されます。

コロナに関係ないエネルギー事業でも赤字に

エイチ・アイ・エスの2019年10月期の海外旅行事業の売上高は45億2,100万円。売上高全体の6割を占めていました。

決算説明資料より

エイチ・アイ・エスは旅行事業そのものの依存度を売上高の5割(コロナ前は7割)程度まで下げ、事業ポートフォリオを拡大・強化する方針を掲げました。2017年4月に再生可能エネルギー事業へと参入しましたが、そのように全く別の事業展開をしようというのです。

しかし、それにも大きな壁が立ちはだかります。経営ノウハウに欠ける新事業では、利益を出すのに時間がかかるという点です。

事実、エネルギー事業は上手くいっていません。

エネルギー価格高騰により、電力価格が上昇。仕入れ価格が高騰してエネルギー事業は2期連続で100億円もの赤字を出しています。

決算説明資料より

コロナとは全く関係のない事業にも関わらず、エネルギー価格高騰という別要因で収益性が悪化しました。

エイチ・アイ・エスは2023年3月にオンライン診療・医療相談サービスのMedifellowに出資。4月には患者と医師のマッチングをサポートする「ドクターズ・ファイル」を提供するギミックにも出資をしました。目下、メディカル領域を強化しています。

攻めの姿勢を崩さないエイチ・アイ・エスの経営スタイルは“らしさ”が光るものですが、自己資本比率が10%程度まで低下しており、守りにも注力しなければなりません。

再度の増資を行うか、子会社や不動産を処分するか。近々、そのいずれかを実行するものと予想できます。

主力の海外旅行の本格的な回復はまだまだ先でしょう。エイチ・アイ・エスの底力が試されます。

取材・文/不破 聡

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