「土にかえるカットソー」誕生の経緯と生分解性、「洗わなくても匂わない」という特徴についてインタビュー
2022年の10月に、筆者は株式会社ヤマップの製品回収プロジェクト「生まれ変わる、やまの服」という試みについて取材し、記事をアップした。
この「生まれ変わる、やまの服」とはポリエステル100%で作られた、もう着る機会の少なくなったウェアを賛同者が提供するところからスタートする。大勢から寄せられたウェアは繊維に戻され、これをもとに今度は新しいウェアへと再生される形に。
完成されたウェアは、リサイクルポリエステル100%速乾Tシャツとして発売されるというものであり、協力した人に対しては返礼品が送られるという仕組みであった。
モノを大事に使い続けることも大事だが、使わなくなったモノを回収し、繊維に戻してそこからまた新しいモノを作るというこのプロジェクトに、個人的に大きな関心をおぼえた。
そんな株式会社ヤマップが、また興味深い取り組みを見せている。
なんと今度は、土にかえるカットソーの販売がスタートしたというのだ。
今度は生分解性の高い素材で作られたカットソーが登場!その特徴とは?
株式会社ヤマップ(福岡市、代表取締役CEO 春山慶彦)は「PlaX(プラックス)」という新素材を研究開発するBioworks株式会社(京都府相楽郡、代表取締役CEO 今井行弘、以下 Bioworks)とタッグを組み、生分解性素材のアウトドア用カットソーを新発売。
本製品は3月31日にオンラインストア「YAMAP STORE」にて販売が開始されている。
Bioworks株式会社は従来よりその活用が模索されてきた、トウモロコシやサトウキビを原料としたポリ乳酸をアップデートさせた新素材「PlaX」を開発しており、その新素材を使って今回のカットソーは作られている。製品には「PlaX」と抗菌・防臭効果を持ち吸水性にも富んだウール、肌触りも良くなめらかな質感のキュプラを組み合わた素材を用いており、洗濯機での洗濯も可能なカットソーに仕上げている。
何と言っても、最大の特徴は生分解性素材で出来ているという点。生分解性プラスチックとは微生物の働きによって分解され、最終的には自然界へと循環する輪に加わる素材で、前述のポリ乳酸もその中の一種である。
ポリ乳酸は環境に対しての負荷が少ないことでかねてより知られていたが、昨今ではカーボンニュートラル素材としての特色が注目されてきており、Bioworks株式会社は長年その研究に邁進してきた。
そして、株式会社ヤマップと手を組み、生分解性素材のアウトドア用カットソーとして商品化された、という形になる。
今回は本製品についていくつかの質問を、株式会社ヤマップのSTOREグループ商品企画の乙部さんとBioworks株式会社クリエイティブコミュニケーション部の小栗さんにインタビューさせていただく機会を得ることができた。
非常に興味深く、また感嘆するような回答を得ることができたため、以下にご紹介したい。
なぜヤマップとBioworksはタッグを組んだのか?
松本 機能性と環境への配慮という要素を両立させた生分解性の高いカットソーの登場は、画期的と感じられます。まずはじめに、ヤマップさまとBioworksさまが、今回の製品を共同で開発することとなった経緯を教えてください。
ヤマップ 乙部さん 私たちが運営しているYAMAP STOREというお店は、「つづく、つながる、ものがたる道具店」であることを大切にしています。
私たちがいいと思った山道具とユーザーさんをつなぎ、商品をただの道具としてだけではなく、自分と自然をつなぐ物語の一部として大切に長く使ってもらう、そんなつながりを提供できるお店でありたいと思っています。
YAMAP STOREではさまざまな商品を取り扱いさせていただいているのですが、アウトドア用品は過酷な環境下でなるべく快適に過ごせるような商品開発がされているため、非常に機能性と耐久性が高いものが多いです。
機能性や耐久性が高いことはもちろん素晴らしいことなのですが、反面、環境にとっては、あまり優しくない素材であることも多く、なかなか両立させたアイテムというのは生み出しにくいのが現状。「アウトドアメーカーでも、アパレルメーカーでもないヤマップだからこそできることは何かないだろうか?」と常々感じていました。
そんな中で出会ったのが、Bioworksさん、及びPlaXです。「この素材であれば、機能性と環境への配慮を両立させ、自然とのつながりを感じられる商品をつくることができるのでは?」と思い、アウトドアウェアとして提案ができないか、と相談させていただき、開発がスタートしました。