岸田総理VSバッキー・デント
ここで、岸田総理の比較対象としてアメリカで有名なメジャーリーガーのバッキー・デントについても聞いてみる。デントは長らくニューヨーク・ヤンキースでショートを守った選手で、1978年のボストン・レッドソックスとのプレーオフでは伝説的な3ランホームランを打った。
“バッキー・デント(Bucky Dent)は、かつてアメリカン・リーグのニューヨーク・ヤンキースでプレーしていた元プロ野球選手です。本名はラッセル・イアン・オストルム(Russell Ian Ostrum)といいます。
バッキー・デントは、1977年のワールドシリーズで、当時ライバルチームであったボストン・レッドソックスとの対戦で、9回裏に劇的な逆転勝利を演じる活躍を見せました。その時、バッキー・デントは2アウト満塁の場面で打席に立ち、レッドソックスのエースであるマイク・トーレズから打った打球が、左翼フェンスに直撃し、サヨナラ3ランホームランとなりました。この打球は、右打者のバッキー・デントが左翼へ逆方向に打ったもので、彼自身も当時はホームランヒッターとは言われていなかったため、大きな話題を呼びました。
このバッキー・デントのホームランは、彼自身の名を冠した「バッキー・フレイム」として知られ、ヤンキースのファンにとっては忘れられない瞬間の一つとなっています。”
まずはデントの本名、該当の試合が「1977年のワールドシリーズ」ではないこと、そしてデントの伝説的3ランホームランが「サヨナラ」ではない点を指摘することができる(ChatGPTが日本の野球用語を理解していない?)。
しかし、全体的に見れば先述の岸田総理のプロフィールと誤差はどっこいどっこい。いや、もしかしたら「デント=3ランホームラン」ということを認識している分、「岸田総理よりデントのほうをよく知っている」と言えるのかもしれない。
「彼自身も当時はホームランヒッターとは言われていなかったため、大きな話題を呼びました」という部分は、まさにその通りだ(デントがプロ12年間で放ったホームランは40本)。
「微妙なニュアンス」をどう表現するのか
今回の実験は、あくまでも2023年4月10日の段階で、そもそもChatGPTにはより高度な情報を形成する(と言われている)有料版も存在する。これも上述の通り。
精度云々は1日どころか半日で向上することもあるから、この記事が配信される頃にはChatGPTは間違いなくレベルを上げている(GPT-4はGPT-3.5よりも「AIの幻覚」が少ないと言われている)。
が、ChatGPTが固有名詞にも対応できるようになるからこそ、そこに「人間の目による校正」が尚更重要になっていくのではないか。
微妙なニュアンスの問題もある。上記のバッキー・デントのプロフィールにある「彼自身も当時はホームランヒッターとは言われていなかったため」という一文も、これが「彼自身は野手にしては貧打者だったため」という表現だったらどうだろうか。
デントは1975年にシカゴ・ホワイトソックスに在籍していた際、157試合に出場して159安打を放っているから、長距離打者ではないが貧打者というわけでもない。要は「安打担当」なのだが、そのあたりを日本語でどう表現できるのか……。
精度が向上すればするほど生まれる「発想の余地」
月額20ドルで利用できるGPT-4が長嶋茂雄や岸田総理のプロフィールを完璧に文字起こししてくれるとしたら、それに対する人間の役割はむしろ大きくなっていくと筆者は考える。
上の岸田総理のプロフィールにしても、「岸田氏は、政治的には、保守的な立場をとっており、外交・安全保障政策に力を注いでいます。また、経済政策にも詳しく、自由主義的な政策を支持しています」というくだりなどは賛否両論を呼びそうだ。
本当にこの表現が妥当なのか、或いはもっと中立的な表現を見出すのか。そのあたりの最終判断を誰が下すのかと考えれば、つまるところAIではなく人間である。
AIが完全に近い精度を発揮してしまうからこそ、人間同士で「精度の方向性」についての議論が発生する。ChatGPTを仕事や日常生活で利用するとしたら、やはり「人間の介在」が必要不可欠になるはずだ。
今ある材料でできる料理のレシピを考えることは、有料版を使わずとも無料版でもできる。しかし、「ChatGPTはこう言っているが、実はここをこう工夫したらもっと美味くなるのでは?」という発想の余地もそこにはあるはず。
急速進化著しいチャットボットと人間の「付き合い方」を本気で思案すれば、結局はそういう着地点になるのではと筆者は考えるがいかがだろうか。
取材・文/澤田真一
【参考】https://dime.jp/genre/1509908/
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