小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

未来都市が現実に!「スーパーシティ」が目指すこれからの街づくり

2023.04.14

②大阪府・大阪市:夢洲・うめきた2期から生まれる「いのちの街」

スーパーシティ型国家戦略特区として指定された大阪市は、大阪府と共同で実現に向けて動いている。大阪市デジタル統括室スマートシティ推進担当係長の板秀史さんが説明する。

「以前より、住民QoLの向上を目指し、大阪府および大阪市は以前よりスマートシティの推進に取り組んできました。加えて、大阪・関西万博の開催地である『夢洲』、そして『うめきた2期』という2つのグリーンフィールド(都市開発が可能な土地)を有しています。スーパーシティ制度を活用して、これらのグリーンフィールドで先進的サービスをどこよりも早く実装し、そこから得られる成果やデータを大阪全体へ成果を波及させることを目指しています」(板さん)

大阪のスーパーシティ構想では、大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に沿って、「データで拡げる健康といのち」をテーマに掲げている。

「夢洲・うめきた2期の2つのグリーンフィールドを対象に、大阪・関西万博、夢洲コンストラクション、うめきた2期という3つのプロジェクトを展開します。これらのプロジェクトでは、ヘルスケアとモビリティの分野を中心に先端的サービスを実装することで、働きやすく住みやすい、健康で快適な質の高い暮らし(住民QoLの向上)と、大阪の成長・発展(都市競争力の強化)へと寄与します」(板さん)

ヘルスケア分野では、国籍や住む場所に関係なく最先端の医療が受けられる「先端国際医療」を実装予定だ。他にもAI分析などによる健康増進プログラムや、次世代PHRを活用したきめ細やかな医療サービスを提供する環境を構築していく。

万博開催に向けた建設工事の円滑化をめざす夢洲コンストラクションでは、建設現場へのドローン活用やデジタルツイン(高精度3D都市空間)による工事の効率化などに取り組む。大阪・関西万博では、空飛ぶクルマの商用運航の実現をはじめとした、未来社会を意識した先端的サービスを展開し、万博後の社会実装につなげる予定だ。都心の大規模ターミナル前に位置するうめきた2期では、国際競争力の向上を目指し、質の高い都市機能を集積させる。さらに多くの来街者を想定し、うめきた2期の約半分を占める大規模な「みどり」(緑豊かなオープンスペース)を活用し、ワーカー・観光客など来街者に「みどり」を使った体験や行動変容の機会を創出する計画だ。

エアタクシー『eVTOL Joby S-4』
2025年度に実用化を目指している空飛ぶクルマの運行事業者には、ANA及びJoby Aviation、JAL、丸紅、SkyDriveの5社が選定された。ANA及び米Joby Aviationは、Jobyが開発した電動エアモビリティ『eVTOL Joby S-4』を運行する。

これらの取り組みは、複数分野にわたる先端的サービスが組み合わさったプロジェクトであるため、サービス事業者や府市の担当部局などの実施主体や関係先が多岐にわたっている。それらが一体となって事業を推進していけるように主導していくことが、行政としての課題だと板さんは語る。

「自治体だけでなく、民間事業者などの強いコミットメントを得て強力に推進していくために、大阪府・大阪市と経済界等により大阪スーパーシティ協議会を22年6月より定期的に開催しています。22年12月には、指定区域で実施を目指す先端的サービス及び規制改革の内容などを取りまとめた全体計画を作成しており、引き続き協議会で意見交換を行いながら全体計画の推進を進めていきます」(板さん)

従来の枠組みでは実現が難しかったり、スピード感に欠けていたりしたプロジェクトでも、スーパーシティ型国家戦略特区であれば、大胆な規制改革を含めた強力な推進力のもと進行可能だ。しばしば”デジタル後進国”と称される日本がデジタルの力で世界最先端の発展を遂げるためには、スーパーシティでの成功は重要なマイルストーンであるといえる。

③石川県加賀市:”消滅可能性都市”復活のカギはデジタルの力

石川県の最南端に位置する、人口63,000人の加賀市は、2014年に消滅可能性都市に指定された。政策戦略部スマートシティ課の細野幸司さんによると、ピーク時には8万人だった人口が、2040年には半分の4万人にまで減ると予測されているという。

「対策事業として子育て支援などに取り組んできましたが、他の自治体との差別化に苦心していました。その一方で、当時はビッグデータやIoTなど次世代のIT技術に関する話題が増えてきた時期でした。加賀市が先進的に最新技術を導入することで、生き残るための活路を見いだせるのではないかと考え、2016年からはスマートシティ化へと方向性を転換し、様々な事業を推進してきました。それらの取り組みや自治体としての方向性が政府のスーパーシティ構想に合致し、デジタル田園健康特区として採択されました」(細野さん)

石川県が開発した最高級ぶどう『ルビーロマン』の商品化率向上を目指し、加賀市ではIoT技術を活用し、熟練の技や気象、生育環境の「見える化」を推進。商品化率は県平均を上回る70%以上に向上し、金沢中央卸売市場の初競りで史上最高額となる一房140万円の値を付けるまでに至った。

主な事業として、住民の医療情報を預かり、集約したデータをもとに政策やサービスで暮らしを支える「医療版情報銀行」の構築が挙げられる。また、マイナンバーなどを活用して電子上で住民登録を行い、様々な行政サービスを提供する「e-加賀市民」制度も推進中だ。

「まずはフレイル(心身が弱った状態)やロコモ(移動機能が低下した状態)といった高齢者の身体的リスク低減を目指します。いずれは、ゆりかごから墓場までの人生全体におけるさまざまなデータを蓄積し、市民の健康生活をトータルで支える基盤として活用したいと考えています」(細野さん)

同じく特区として指定されている茅野市や吉備中央町とも、自治体の垣根をこえた連携を推進し、相互運用性を向上していくそうだ。

「現在、自治体ごとの地域医療情報連携ネットワークをデータ連携することで、全ての医療情報を一元管理ができる仕組みを作っています。この事例が成功し、全国へと展開できれば、例えば旅行先の病院で急な病気にかかっても、過去の病歴などをすぐ参照できるなど、よりきめ細やかな医療サービスが提供できるようになります」(細野さん)

それ以外にも、スタートアップ企業が3年間無料で利用できるインキュベーションルームを拡張整備するなど、企業活動への支援も積極的に行っている。

「規制改革なども視野に入れつつこれらの取り組みを実現させることで、市民の生活がより豊かになり、民間企業がよりチャレンジしやすくなる環境を作っていきたいです」(細野さん)

人口流出を防ぐためには、都市部のようなビジネスや生活基盤を地方でも成立させることが重要だ。そのためには、行政が主導となって生活や経済のインフラを整備することが欠かせない。それはデジタルにおいても同様なのだ。

取材・文/桑元康平(すいのこ)
1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行うウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年4月16日(火) 発売

DIME最新号は「名探偵コナン」特集!進化を続ける人気作品の魅力、制作の舞台裏まで徹底取材!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。