アマゾン創業
1994年に起業した際の事業資金はベゾスが出した現金1万ドルです。
その後、16ヶ月間で調達した資金は無利息の借入金8万4000ドルのみでした。
また1995年にベゾスは両親から10万ドルを出資してもらいますが「70%の確率でお金が返ってこない可能性がある」ことを正直に語ったそうです。
数人の従業員を雇い、倉庫から事業をスタートした際のエピソードとして、仕事用のデスクとして机を購入するのではなく、1枚60ドルのドア板から机を作った話が有名です。
無駄なコストを省く、ベゾスの経営哲学の一端がみえるのではないでしょうか。
こうして、私たちが知るECサイトのアマゾンは1995年5月に一般公開されます。当初から、アマゾンの特徴であるユーザーによる商品レビュー機能が実装されており、ときに否定的なレビューを好ましく思わない出版社から苦情が来たこともあったようです。
しかし、ベゾスが経営で最も大切にしていたことは「顧客体験」であり、アマゾンを便利だと感じるユーザーを増やすために品揃えを増やし、集客力が増してくるとアマゾンで販売したいと考える売り手が増えることを確信していました。
このビジネスモデルがベゾスの狙い通りに進んで成長していったのです。
最初に書籍を選んだ理由
ベゾスがアマゾンで最初に販売した商品は「書籍」ですが、ここには明確な理由があります。
インターネットで販売するうえで大切にしたことは、顧客が模造品なのかを気にする必要がない商品であること、商品の豊富さ、マーケットの大きさ、参入余地、仕入れの容易さ、この5つでした。
たとえば書籍は購入する場所が書店でもインターネットでも同じ商品が販売されます。また1994年当時、英語の書籍だけで150万冊以上あり、全米での書籍売上は190億ドルという大きな市場でした。また参入余地として、インターネットで販売することで実店舗のような在庫制限がかからないため、より豊富な商品を提供することができます。また仕入れの容易さに関しても、出版業界には出版社と書店をつなぐ取次業者がありますが、取次の倉庫が全米中に存在し、注文をすれば2~3日で書籍を届けることが可能でした。
こうした条件で商品を選別した結果、書籍を販売することを決断したのです。
つまり多くの人が普遍的に必要とする商品とイノベーションを組み合わせたことが、今日のアマゾンの躍進へとつながったといえるでしょう。
コストコ創業者ジム・シネガルとの出会い
2001年のITバブル崩壊時、アマゾンも厳しい資金繰りを迫られ、この危機を乗り切るために値上げを行うべきか決断に迫られたことがあります。値上げをしてしまうとアマゾンが最も大切にする顧客体験の質を低下させてしまうと悩んでいたとき、ベゾスはコストコと業務提携を行うために創業者ジム・シネガルと会い、大きなヒントを得ます。
コストコのビジネスモデルは粗利益のほとんどが会員費であり、どの商品も会員に対して破格の値段で販売しています。事実、コストコは人気商品も仕入れ値から14%の利幅までに抑えることで、顧客が来店するたびに会員になって良かったという満足感を提供し続けているのです。
この出会いがキッカケとなり2002年にアマゾンで新たに誕生したサービスが「マーケットプレイス」です。ここでアマゾンのサイト内で商品を販売する業者が手数料を払っても、アマゾンで商品を売りたいという企業を集めることに徹していくのです。検討していた値上げは辞めて、アマゾンの理念である「顧客体験」という原点に立ち返る、大きな転換点でもあったのです。
また同年、立て続けに生まれたサービスが「アマゾンプライム」です。これはアマゾンの会員は配送料が無料で翌々日に届くサービスとして、現在でも多く方が利用していますが、このプログラムもベゾスの指揮によって生まれたのです。