中部横断自動車道の経済効果は未知数で、かつ計り知れない。
2021年8月に南部IC~下部温泉早川IC間が開通したことで、新東名高速道、東名高速道、中部横断道、中央自動車道、そして首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が接続された。この大環状線は物流を促進し、それまでは考えられなかった光景が既に実現している。
この話題に触れると、どうしても1記事や2記事では足りないほどだ。しかしここは我慢して、今現在発生している「中部横断道効果」の一部をご紹介したい。
中部横断自動車道開通情報ページ(国土交通省 甲府河川国道事務所HP)
山梨県にコストコが!
古代ローマ帝国が存在した時代から、道路は都市の発展に重要なインフラだ。
それは現代でも変わらず、利便性の高い道路が開通したその日から地域経済に変革が訪れる。
読者の皆様は、かつて山梨県南アルプス市に『南アルプス完熟農園』という商業施設があったことはご存知だろうか? これは市が出資して設けられた体験型牧場及び地域物産店で、中部横断道(当時は静岡県と接続していなかった)の南アルプスIC付近にあった。そのコンセプト自体は全く悪くはなかったはずだが、施設の規模に見合うだけの集客は全く生み出せず、開園から僅か7ヶ月で経営破綻してしまった。
そんな施設の跡地に、会員制大型スーパーマーケット『コストコ』が出店することが既に決まっている。山梨県内では初の出店だ。
もちろん、これも中部横断道で山梨と静岡がつながったことによる効果である。この道路を使って山梨から南下する人々、逆に静岡から北上する人々が南アルプスICを下りてコストコを利用すると見込まれている。
静岡県静岡市在住の筆者にとっても、かなり大きな話である。現状、静岡市中心部から最も近いコストコは浜松倉庫店(Co-wakeyaなら静岡市内にあるが)。東名道に乗って行く場合、移動時間は1時間ほど。そして、これから実現するコストコ南アルプス倉庫店も静岡市中心部からはやはり1時間強といったところなのだ。
さすがに普段の買い物には遠い距離だが、休日のドライブと兼ねた買い物であれば程よい距離である。そして、静岡市民の感覚で言えば山梨県は「東京方面」だ。単純に東名道で真東に行くのではなく、山梨を経由しながらゆっくり首都圏へ出てみよう……という選択肢も出てくるだろう。
これも「中部横断道効果」である。
峡南地域の物産を県外へ
さて、筆者は@DIMEで執筆する記事のネタを探すためにPR TIMESを活用している。
そのPR TIMESで、山梨県がプレスリリースをよく配信しているのはご存じだろうか。このあたりは静岡県とよく比較される点でもある。山梨県は静岡県よりも産業が豊富ではなく、故に活路を新産業の創出に見出している。
たとえば、PR TIMESで2023年3月30日に配信された以下の記事に注目していただきたい。
『峡南地域の観光振興の羅針盤となる峡南地域観光振興戦略を策定 峡南地域(市川三郷町、早川町、身延町、南部町、富士川町)の価値を伝えるコンセプトは「HEALING in FUJI VALLEY」』
山梨県の「峡南地域」は、『ゆるキャン△』の登場キャラたちの地元と言えば通りが良いだろうか。現に『ゆるキャン△』とのタイアップが盛んに実施されていて、中部横断道に沿う道の駅でもキャラグッズが販売されている。
しかし中部横断道がなければ、峡南地域はお世辞にも交通の便が良い場所とは言えない。これは地元の物産を県外に流通させる上でも不利な要素で、それ故に県外の来訪者は峡南地域が物産の宝庫であることに驚愕してしまう。「モノはあるが、外へは出しづらい」という状況だったのだ。
無論、それも既に昔話である。