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ウサイン・ボルトのBolt Mobilityは車両を放置したまま事業放棄、電動キックボードシェアサービスが抱える課題

2023.04.10

車両を放棄してオペレーション終了

ここで、2022年7月23日に配信されたカリフォルニア州リッチモンド市のトム・バット市長のeメールフォーラムの内容を引用したい。

「非常に残念ながら、Boltは事前通告や資産の撤去を行わずにオペレーションを終えてしまったようです。最近の彼らは市の月例会議を欠席し、クライアントの質問に対して応答することもありませんでした。市は、放棄された設備をすべて撤去する計画を立てています。解決までの間、自転車を破壊しないようお願い致します」

「Bolt」という名を関するモビリティサービスはヨーロッパにも存在するが、この場合はもちろんウサイン・ボルト氏のBolt Mobilityを指す。

2022年初頭まで、Bolt Mobilityは順調な拡大を遂げていると思われていた。同業の他サービスを買収して拠点を広げることにも成功し、投資家からの資金調達額は公表されているだけで4,020万ドル。が、結局は資金繰りに苦戦するようになり、最後は進出都市に展開する車両を回収しないまま会社自体を畳んでしまった。

バット氏のeメールフォームでは、アメリカ国内の他の都市でも発生していた「Bolt Mobilityの事業放棄」に関するニュースのリンクを容赦なく貼っている。

街中に捨てられた数百台の電動キックボードと電気アシスト自転車を回収するために、自治体の予算が投じられるのだ。バット氏の怒りがよく伝わる文面である。

Bolt Mobilityに対してはTechcrunch、The Vergeといった大手のテクノロジーメディアが個別にコンタクトを取ったが、返答はなかったという。

現役時代から環境問題に熱心だった人物の、あまりにも杜撰な事業の幕引き。そしてこの騒動は、シンガポールのoBikeの一件に続いて「環境問題に取り組んできたはずのサービスが、都市環境に悪影響を与える可能性がある」ことを指摘するような形になった。

シェアサービスの「持続可能性」

日本では、今年7月から道路交通法が改正される。「特定小型原動機付自転車」という区分が新設され、それに適合する電動キックボードの乗車がより手軽になる。

筆者の住まいである静岡市は、まだ電動キックボードのシェアサービスは存在しない。が、電動キックボードに乗るための安全講習会は既に行われている。

それを鑑みると、静岡市にシェアサービスが到来する日はそう遠くないだろう。

故に我々は、「これからやって来るシェアサービスの持続可能性」を真剣に考えなければならない。「持続可能な乗り物」よりも「持続可能なシェアサービス」を優先させなければ、そのツケは必ず市民に返ってくるのだ。

停滞気味のシェアサイクル事業が静岡市で成功を収めている理由

静岡県静岡市でサービスを展開しているスマートシェアサイクル『PULCLE』。2020年6月から市内を走っているこの自転車は、今や「市民の足」となっている。 これ...

【参考】

Techcrunch
https://techcrunch.com/2022/07/31/bolt-mobility-has-vanished-leaving-e-bikes-unanswered-calls-behind-in-several-us-cities/

The Verge
https://www.theverge.com/2022/8/2/23288748/usain-bolt-mobility-escooter-rideshare-fail

取材・文/澤田真一

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