高等裁判所でチャブ台返しです!
ところがどっこい!
高裁でチャブ台返しです。Xさんの全面敗訴です。解雇がOKとなりました。裁判所は「こりゃ経理の資質がないよ」と判断しています。解雇OKとした理由は以下のとおり。
▼ Xさんの能力を買って採用した
具体的には裁判所は以下のとおり判断。
Xさんを雇用したのは、業況拡大に対応した社内体制構築の一環としてであり、Xさんが社会保険労務士の資格を持ち,経歴からも複数の企業で総務や経理の業務をこなした経験 があることを考慮し、労務管理や経理業務を含む総務関係の業務を担当させる目的であり、人事、財務、労務関係の秘密や機微に触れる情報についての 管理や配慮ができる人材であることが前提とされていた。
▼ 普通は会議でブチ上げないよね
裁判所は「ミスを見つけた時のXさんの行動、ただの自己アピールじゃん」と判断。具体的には以下のとおり。
■ フツーはこんな手順を踏むでしょ
経理処理上の誤りを発見した場合においても,まず, 自己の認識について誤解がないかどうか,専門家を 含む経理関係者に確認して慎重な検証を行い,自らの認識に誤りがないと確信した場合には,経営陣を 含む限定されたメンバーで対処方針を検討するとい う手順を踏むことが期待される
■ なのにXさんときたら
自らの経験のみに基づき,異なる会計処理の許容性についての検討をすることもなく、従来の売掛金等の計上に誤 りがあると即断し,上記のような手順を一切踏むことなく〜必要性がないにもかかわらず,突然「決算書に誤りがある」との発言を行ったものであり組織的配慮を欠いた自己アピール以外の何物でもない
(判決文より引用)
裁判官がここまで毒を吐くのは結構めずらしいですね。
▼ 経理の資質ナシ
というわけで裁判所は「経理の資質ナシと判断されてもやむを得ない。これは採用前に知ることができなかったし、もし事前に知っていたら採用することはなかっただろう」として解雇OKと判断しました。
さいごに
今回は専門知識や経験があるはずなのに「こいつヤベ!」という発言があったので解雇OKとなりました。
しかし、ちょっと仕事ができないくらいで解雇OKになることはありません。オラオラ社長は勘違いしてることが多いですね。「試用期間はお試しだから気に入らなければ解雇できるんだ!オラ!」と。口がくさいですね。ぜんぜん違います。
▼ 解雇ダメ〜となったケース
裁判例を挙げますね。詳細は解説できないので事件名でググってみて下さい。
・にいよんろく設計事件:東京地裁 H27.1.28
・オープンタイドジャパン事件:東京地裁 H14.8.9
・ファニメディック事件・東京地裁 H25.7.23
・社会保険労務士法人パート ナーズほか事件:福岡地裁 H25.9.19
▼ 相談するところ
もし会社から試用期間中の解雇をにおわされている方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。
労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
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取材・文/林 孝匡(弁護士)
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