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「自己アピール以外の何ものでもない…」裁判所が毒を吐くほどのトンデモ社員が試用期間中に解雇された理由

2023.04.13

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。

裁判例をザックリ解説します。

試用期間中にトンデモ発言をして解雇された事件です。

経理スキルを買われて入社した社員が、突然、会議でトンデモ発言。

「試算表や決算書が間違っている」

会社は「コイツやば!根拠ないのに自信満々やん!」と思ったのでしょう。27日でスピード解雇。社員が解雇無効を求めて訴訟を提起(以下「Xさん」)。

〜 結果 〜

判断が割れましたね。地裁は「解雇ダメ〜」と判断したのですが、高裁では「解雇OK!」となりました。

高裁はザックリ「経理の資質がナイね」と判断。あと「Xさんの発言は組織的配慮を欠いた自己アピール以外の何物でもない」と、めずらしく毒を吐いています。

▼ 注目!

今回は解雇OKとなりましたが、解雇ダメ〜となることの方が多いです。試用期間中に「ちょっと仕事できないな」くらいで解雇しても裁判所で「解雇ダメ〜」となることの方が多いです。

以下、分かりやすく解説します(空調服事件:東京高裁 H28.8.3)

登場人物

▼ 会社

・空調服の販売などをしている会社

▼ Xさん

・パート従業員として入社
・当時43歳
・社会保険労務士の資格を持っていた

どんな事件か

マッハ解雇です。入社から27日で解雇を言い渡されています。経緯を見ていきましょう。

▼ こんな人いるけど、どう?

会社は親族企業だったんですが、業績が好調だったため業務を拡大することを決定。そのために社内体制をキチンと構築することを決めました。労務関係や経理関係もキチンとしておかなければダメですよね。

ある日、経営コンサルタントから「こんな人いるよ」とXさんを紹介されました。コンサルいわく「Xさんは社労士の資格を持っていて経理関係の知識・経験がある」とのことでした。

お、いいじゃん。

▼ 面接

その後、面接が行われました。Xさんが提出した履歴書には以下の記載がありました。


・経歴
 海運代理店1社・卸売会社3社に勤務
・総務(労務を含む),経理,営業,貿易など全般を経験
・志望の動機
 「労働社会保険諸法令に関心が高く、労務関連の職務は望外の喜びです」
・本人の希望
 「職務を労務に限定しないこと」


社長としては「経理キチンとできるんだよね」と感じていたと思います。

▼ 契約内容

晴れてXさんは入社することになりました。契約内容を抜粋すると以下のとおり。


試用期間 1ヶ月
能力・技能,勤務態度,健康状態について不適切と認めた場合は採用を取り消す


あなたの会社でもこんな感じだと思います。よくあるのは「あなたポンコツすぎたからら解雇するね」ってヤツです(まぁ解雇が有効になることは少ないですが)。試用期間は3ヶ月に設定されているケースが多いです。

▼ 出社初日

朝礼でXさんが挨拶をします。会話風にお届けします(判決文を再構成)

Xさん
「このたび入社したXです。労務担当として入社しました」

〜 朝礼終了後 〜

社長
「今、労務とおっしゃっ ていたけど、経理も得意だということだから、経理の方をお願いします」

社長としては経理部門を強化したかったんでしょう。Xさんは経理の担当になります。

▼ ムムッ!

これまでは税務会計事務所が会社の試算表などを作成していました。経理担当となったXさんがこれまでの試算表や総勘定元帳に目を通したところ「これはおかしいのでは…」と感じたようです。

▼ なんじゃコイツは!

と会社が驚愕する事件が勃発します。週1の全体会議でのこと。Xさんはおおむね以下のような発言をしました


試算表や総勘定元帳の売上げや仕入れの計上方法が違っている
試算表や決算書が間違っている


推測ですが社長はこのように感じたんだと思います →( 今まで税理士に入ってもらってキチンと対応してもらっているのにいきなり全体会議でこんな自信満々の発言をするなんてヤバイ奴やな…)

▼ 解雇

その2日後、Xさんは解雇を言い渡されました。会社の言い分は「引き続き従業員として勤務させることが不適当と認められたため」というもの。

Xさんは「解雇は無効です」と訴訟を提起。

地方裁判所の判断

地方裁判所ではXさんが勝ちました。地裁は「解雇は無効」と判断。理由は以下のとおり。

▼ 試用期間中に解雇できるケースとは?

試用期間中の解雇がOKになるケースって少ないんです。以下のケースに限定されています。


採用時に知ることができず,また知ることを期待できないような事実を知るに至った場合であって,その者を引き続き雇用しておくことが適当でないと判断することが客観的に相当であると認められる場合など


▼ 本件

以上を前提に地裁は「今回の解雇ダメ〜」と判断。理由は以下のとおり。

・Xさんの発言に関係者をおとしめるなどの悪意はなかった
・社長に反省の意を示している(2度)
・会社がXさんの発言を明示的に注意した様子はうかがえない
・Xさんが同じような発言を繰り返してもいない

というわけで「解雇は無効」と判断しました。

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