隙間を活用するカフェチェーン店『Kopi Kenangan』
Warung Pintarは、言い換えれば「オンライン配車サービスの周辺産業」である。が、これはオンライン配車サービスというものができて初めてその需要が明らかになったものでもある。
そういう意味でもこれは「隙間産業」と言えるのではないかと筆者は考えているのだが、いかがだろうか。
もうひとつ、今度は本当の「隙間産業」で成功したスタートアップを紹介したい。
ビルの1階フロアにある隙間、ここはいわゆる「デッドスペース」で、新たに部屋を設けるには狭過ぎる空間である。しかし、敢えてここにカフェを作ってしまおう。
「部屋すら作れないのになぜカフェなんだ?」と言われそうだが、それでは容器の蓋を完全密閉構造にして、逆さにしても中身がこぼれないようにすればいい。つまり客席を設けない「持ち帰り専門カフェ」を作ってしまうのだ。
インドネシアで急成長中のカフェチェーン店『Kopi Kenangan』は、全店舗が持ち帰り専門というわけではない。客席のある店舗も存在する。が、借りられるスペースによって柔軟に店舗面積を設定しているようで、中には上述のWarung Pintarと大差ない大きさ(小ささ?)の店舗も。
インドネシアでもスターバックスコーヒー等の外資カフェチェーン店が進出しているが、アッパーミドルクラスのホワイトジャケットはともかくブルージャケットにとってスタバはかなり高い。
毎日利用できるものではなく、だからこそワルンという形態の店舗がこの国には存在するのだ。
さらに、インドネシアにとってスタバが店舗を拡大するというのは必ずしも良いことではない。なぜならこの国は、伝統的に経済保守主義のスタンスを保っているからだ。
外国から物を買うのではなく、逆に外国へ物を売ることを最善とする。あくまでも理想論ではあるが、インドネシアでは輸入より輸出、外資より内資、外国人労働者より自国民労働者が優先だ。たとえば未加工ニッケル輸出規制問題も、そうしたスタンスが大いに絡んでいる。
スタバよりも安く商品を提供できるカフェチェーン店。市民も中央政府もそのようなものを待ち望んでいた。
そして今、願望は現実になったのだ。
2021年12月、Kopi KenanganはシリーズC投資ラウンドで9,600万ドルの資金調達に成功し、同時にユニコーン企業(創業10年以内、10億ドル以上の評価額がある未上場企業)になった。
スタートアップとフェアトレード
これらのスタートアップは、結果としてインドネシアの一次産業の健全化につながっている。
日本のコーヒーショップは、原料を海外産に頼らないと営業どころの話ではない。
しかしインドネシアのコーヒーショップは、その気になればコーヒー豆からココア、チョコレート、ヘーゼルナッツ、果てはバナナや砂糖まで自国産で統一できる。
それをフェアトレードにつなげ、農家の成長を後押ししようというキャンペーンをKopi Kenanganは既に実施している。
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これらのスタートアップから、日本の経営者が学ぶことは非常に多いはずだ。
【参考】
Warung Pintar
取材・文/澤田真一