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慢性的な人手不足が続く中食業界を救う「ロボットフレンドリー」な環境の構築

2023.03.31

ロボフレな環境構築に向けての取り組み

ロボフレな環境構築に向けて、「惣菜製造ロボットの最適化」「デジタルツインによる生産性向上」「量子コンピュータによるロボット・人混在のシフト計算」「ロボットシステム・アズ・ア・サービスの立ち上げ検討」「容器・番重のロボフレ化」の5テーマに取り組み、うち2つ(以下に紹介)は業界初となる。

量子コンピュータによるロボットと人が混在したシフト計算

昨年度はベンダー企業のグルーヴノーツと、ユーザー企業の惣菜協会会員と共に、量子コンピュータによるシフト計算モデルの開発を行い、今年度はマックスバリュ東海(静岡県浜松市)にて、従業員に加えてラインで稼働するロボットも対象にしたシフト計算モデルの開発を行った。

惣菜製造工場にロボットを導入し、人とロボットが協働する環境において生産性を高めるには、人とロボットそれぞれのスキルや能力、役割等を考慮して作業計画を立てることが重要。今回は、ロボットの稼働条件も加味し、人とロボットが混在する工場における人員配置の最適化を進めた。これらの仕組みには、豊富な機能で短期間のシステム構築を可能にするグルーヴノーツのクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を利用している。

「量子コンピュータは注目されていますが事例はとても少なく、世界で量子コンピュータを使って商業サービスを提供できているのは私たちだけと自負しています。ロボットは人手不足解消の武器になりますが、ロボットと人間の組織的な調和があって初めて機能するもの。盛付ロボットを導入すればすべてOKではなく、盛付の前の材料調達、調理の部分で効率よく動けるように準備をしておかないと、万全なロボフレ環境の構築はできないと考えています」(グルーヴノーツ 代表取締役社長 最首英裕氏)

ロボットシステム・アズ・ア・サービスの立ち上げ検討

中小企業が多い惣菜製造業界では、大規模な自動化への投資は難しく、自社でロボットシステムや自動化設備を使いこなせるだけの知見、ノウハウ、人的リソースを有していない実情がある。その解決のため、ロボットシステム導入から保守までの全てを、大きな初期費用が必要のない形で導入できる、ロボットシステムのアズ・ア・サービスモデルの構築を検討した。

三菱HCキャピタルを中心にサトウ産業(新潟県魚沼市)をユーザー企業として、ユーザー、メーカー、システムインテグレーター、レンタル・リース会社が連携し、そのサービスに必要となる機能や要素、サービスを有効に機能させるために共有化・標準化していくべきポイントの洗い出しを行った。これらの結果から、中小惣菜製造企業の自動化に貢献するサービスモデルを構築する。

「食品業界では生産性の向上、労働力不足に悩みを持っている企業が多くロボット化を進めていく必要性がありますが、ロボットを使いこなせる人材がいない、効果がわからない中で導入判断が難しい、多額の費用は出せない、こういった課題を以前から多く聞いてきました。

そこで、ロボットシステム全体をワンパッケージとして提供することで、ユーザー側の導入時の負担を大幅に削減できるのではないかと考えました。こうしたアズ・ア・サービスの考え方はすでにIT産業を中心に広まっており、他の産業にも広がりを見せていますが、食品産業はまだ進んでいないことから、構築すべく検討を進めています」(三菱HCキャピタル 経営企画本部 事業研究・投資開発部課長代理 森田芳弘氏)

「盛付だけでも100名以上の従業員が携わっています。募集をかけても人が集まらない状態で、今後はさらに厳しくなる状況を踏まえて、総菜盛付ロボット化は絶対に必要なものとして参加しました。豊富な資金、高度な技術を持った人材もいない当社のような中小企業にとっては、ロボットを手軽に導入できるレンタル・リースは非常に魅力的です」(サトウ産業 代表取締役社長 佐藤昭二氏)

【AJの読み】中小企業の人材不足を救うカギとなる「ロボフレ環境の構築」

国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、日本の総人口は2030年には1億1662万人、2060年には8674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6773万人、2060年には4418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれている。

こうした状況下で、製造業の中で最も人手がかかっているのが食料品製造業であり、食品製造で最も機械化が遅れているのが、惣菜、すし・弁当製造といった中食。労働人口が減少していく中、中食はロボット化が必須といえる業種だが、中小企業が多いため、ロボットの低価格化やソリューション構築が喫緊の課題となっている。

「食品製造現場の人手不足問題はみなさんが痛感されており、1つでも多くの事例を作っていきたい。今プロジェクトで重要なのは、単に開発に成功してプロトタイプや実証実験ができたことではなく、ユーザー企業に短期間で実装ができたということ。

中小企業庁の『ものづくり補助金』は今年度も継続して行っている。中小企業には補助金を活用していただきながらも、ロボットの価格自体が高額では持続性がないと考えており、ロボフレの取り組みは持続性の観点でも重要。“一点もの”ではなく、多くの方が汎用的に使えるロボットを開発しながら導入試験も続けていくことが大切だと考えている」(経済産業省 製造産業局 産業機械課 ロボット政策室室長補佐 板橋洋平氏)

「経産省、農水省の補助を活用しながら進めていくが、補助金に頼るばかりではなく、ロボットの価格を下げることは重要。1000万円から500万円に下がれば、10年で減価償却すれば1年あたり50万円。年間300万円で人を雇っていた部分を50万円で機械化でき、人手不足の解消だけでなく、250万円の利益が出る。そういうところまで進めていきたい」(日本惣菜協会 AI・ロボット推進イノベーション担当フェロー 荻野武氏)

文/阿部純子

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