「ビジネススキルを学びたい」「情報や知識を増やしたい」──そんなビジネスパーソンに向けて、DIMEがお届けするビジネスセミナー「DIMEカレッジ」。3月16日には、「DIME Digital Trend Summit 2023」と題し、これからのビジネスで避けては通れない、デジタル分野のキーワードやトピックを取り上げる、スペシャルイベントを開催しました。
ゲストとして登壇いただいたのは、ベストセラー『アフターデジタル』シリーズの著者として知られるビービットの藤井保文さんと、アメリカを中心とした最新のテックニュースやスタートアップ、ビジネス情報、カルチャートレンドをゆるーく深堀りしながら解説するポッドキャスト番組「Off Topic」の宮武徹郎さん。@DIME編集長の石崎寛明を加えた3名にJ-WAVEなどで活躍するサッシャさんをMCに迎え、パネルディスカッション形式で、それぞれが注目するデジタル分野のトピックを語り合いました。これからのビジネスのヒントにつながる、示唆に溢れた話題の中から、後半3つのテーマをレポートします。
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テーマ4「DXブームの今とこれから」
「2019年ぐらいに言われ始めたDXが、未だに言われている」と話すのは、このトピックをテーマにあげた藤井さん。DXには大きく「業務のDX」と「提供価値のDX」があると説明し、「後者では、異業種から突然、競合が生まれるということも起こりうる」と、銀行に対するQRコード決済の例を紹介しました。
「日本では先に業務のDXをやりがちだが、あとから提供価値のDXをやると、そもそものビジネスモデルが変わり、業務のDXもう一度やらなければいけない可能性もある」と藤井さん。これに対して、宮武さんも、「インターネット業界はWebにコードが埋め込めるようになってから一気に伸びた。全く新しい体験が出てくると、全部のワークフローを考え直さなければならない」、石崎編集長は「今は生活の中心にスマホがあるので、サービスもそれにあわせて設計されているが、メディアが変わるとまたガラッと変わる可能性がある」(石崎編集長)と、状況に応じた提供価値のDXが必要だという考えを示していました。
「大企業でもDXを推進する担当者はわかっているし、先進的な事例も出始めているが、それがなかなか全社に広がらない。どう浸透させるかが課題になっている」と藤井さん。今は業務体系も複雑になっているので、トップダウンでも難しいと話し、「だから現場に自分事として理解してもらうしかない。リスキリングが注目されるのもそういう側面がある」と話していました。
ココがポイント!
業務の効率化視点で進めがちなDX。これからのDXは顧客体験などより行動にフォーカスしたDXの推進、浸透が必要になってきそう。求められるニーズやスキルに合わせてビジネスパーソン一人一人が変化に対応していく必要があるだろう。
テーマ5「SNSの未来 レコメンデーションメディアの流れ」
「昔はセレブのゴシップネタを学校や職場で話題にしていたが、SNSが出てきて覗き見の対象が友達になった」と宮武さん。とはいえ一般人の日常は、そんなにおもしろいことばかりではありません。そこへ出てきたのが「プロの友達=インフルエンサー」だと言います。さらに、もっと面白いものを見たいというニーズに対し「世界中のユーザーのおもしろいコンテンツをおすすめしますと出てきたのが、レコメンデーションメディアの流れ」と宮武さん。
藤井さんからは「(レコメンデーションが主体の)TikTokはSNSなの?」という疑問も飛び出しましたが、宮武さんは「ソーシャルフォロワーを最初に出すか、出さないかの違いで、やはりSNS」だと説明します。「TikTokも、InstagramのReelsもそうだが、フィードの概念が変わってきている。友達とのコミュニケーションはメッセージ機能でやって、フィードは友達と共有するネタを探すところになってきている」とのこと。
レコメンデーションだとネガティブなものを目にしにくい一方で、「一社がアルゴリズムをコントロールしているリスクもある」と宮武さん。レコメンデーションメディアが進むと、フィルターバブル的になっていって分断が進むとも言われます。藤井さんも同様の危惧を抱いていたそうですが、「最近はその壁を乗り越えて、知らない世界を覗き見させてくれるような、おもしろいコンテンツが増えてきている」とも。自身もそんな異世界覗き見コンテンツが好きだという石崎編集長は、「今後レコメンデーションメディアが発達してくるとして、AIなりアルゴリズムがどんなコンテンツをキャッチして、レコメンドしてくれるのか、すごく興味がある」と話していました。
レコメンデーションメディアは、「藤井さんがいうようなニッチなコンテンツも出てくる一方で、とはいえアルゴリズムはエンゲージメントを重視するので、ほかの人が多く見ているコンテンツを出しがちになる」と宮武さん。「今後はニッチなものと、モノカルチャー的なものの両極端になるのでは」と予測していました。
ココがポイント!
レコメンデーション化の流れでカルチャーが均一化してしまうのか、それともアルゴリズムが新たなカルチャーを生むのか、SNSの変化は日常生活や人々に思考にも大きな影響を及ぼしそう。米国でのTikTok禁止法案の動きなど、今後もSNSから目を離せない。
テーマ6「ポストスマホの行方」
最後のテーマはスマホに代わるデバイスについて。折りたたみスマホやARグラスなど新しいデバイスも登場していますが、石崎編集長は個人的に「イヤホンの進化に期待している」とのこと。「耳って心拍も測れるし、いろんな身体データをセンシングができるはずなので、メンタルケアや生産性を上げる工夫など、もっといろんなことができるんじゃないかと思っている」とのこと。最近はポッドキャストやオーディオブックなど、音声コンテンツも人気を集めていることから、注目していると言います。
AIが進化して、音声アシスタントと会話ができるようにもなってきていますが、「Appleが望んでいるのも、1日中『AirPods』を着けていること」と宮武さん。「今の子供達はすでに、ボイスアシスタントを使い慣れている」というと、MCのサッシャさんも自身のお子さんもそうだと頷いていました。
「確かに音は、すごく可能性があると思う」と藤井さん。「目の暇、耳の暇、手の暇という言葉があって、目でテレビを見ていても、手が暇でスマホを触ってしまう。漫画を読みながら、耳でポッドキャストを聞いたりする。そうやってどんどん、五感を使わないと満足できなくなってくるのでは?」と話していました。
ココがポイント!
ChatGPTのようにAIも会話ベースで開発されているものが多く、耳と音声を活用したソリューションやサービスは今後増えて生きそう。24時間VR/ARグラスをつけている時代はまだ少し時間がかかりそうだが、24時間イヤホンをつけている時代は意外と早くくるかもしれない。
DIMEでは今後もさまざまなゲストを招いて、少し先の未来を考える「DIME Digital Trend Summit」を開催していきたいと思います。ぜひ次回にもご期待ください!
取材・文/太田百合子 撮影/黒石あみ